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2009年6月28日

●見てきました!「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」(ネタバレ全開要注意)

想像以上に私好みだった。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』を見てきたので早速レビューしちゃいます。
なお、今レビューでは以下の構成でお送りします。
前半「安全深度:ネタバレ無」
後半「危険深度:ネタバレ全開」
※後半はマジで危険です(笑)
※なお、全ては記憶に基づいて書いているので多少のミスはごめんして下さいね。
※とにかく、広い心で見ていただければ幸いです。

安全深度:ネタバレ無

さて、逸る気持ちを抑えつつ実はお昼に用事があったので昨日(初日6月27日)21:00のレイトショーにて『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』を見る事となりました。
前回の『序』では久方ぶりのヱヴァという事でかな~り興奮しておりましたが、今回は結構冷静に見に行ったつもりでしたが、今回も『庵野マジック』にドハマってしまいました。
いや、マジでいいますが『破』は面白いです!
受け取る人にもよりけりと思いますが、個人的には『破』は『序』より面白いと思います。
やや足早にストーリーを消化した感のあった『序』に比べ『破』は「碇シンジの新しい物語を語る」、そのスタンスから成り立っているためかストーリーのボリューム感がほどよい感じでした。
その代わり割りを食らったキャラもいますが(後述します)
今回、男を上げたシンジくんシンジくんはぶれながらも良い感じで成長していきます。
おっとっと、新キャラの真希波・マリ・イラストリアスは良い味出してましたよ(以後、マリと書きます)
可愛い系キャラと思ったら、意外にさばさばとした竹を割った様な良い感じのキャラでした(同じ回を見た他の人が「ポイント高いキャラですね♪」って仲間と話していたのが印象的でした)
今回もっとも印象の変わったキャラは綾波レイ。
彼女がどんなに変わったのかは劇場にて確認しましょう。
ちなみにリナ・レイの様な変化ではありません(爆)
もっと深く、良い感じで彼女は変化します(シンジくんのおかげでね♪)
覚悟の出来ている方は後半のネタバレコーナーをご覧下さい。バンバン書いてますから(「責任取ってね」って言われても困りますが(それ意味ちゃう(笑)))
それと前回同様ですが、エンディングは最後まで見ましょう。
エンディング途中で席を離れると後悔しますよ。
いや、ホント、マジでね。

ここでムカついた事が二つ。
実は郊外型シネコンのTOHOシネマズでヱヴァを見たのですが、楽しみにしていた「EVA-EXTRA Vol.4」が初日そうそう売り切れ。
そして、なんとパンフレットも売り切れとの事。
何やってんのTOHOシネマズ!
そんな訳で、本日(6月28日)もヱヴァを見てしまいました(後悔はしていない。面白かった)
昨日売り切れと言っていたパンフレットは入手できました(1日あたりの配布数を制限してるんですね)
しかし、「EVA-EXTRA Vol.4」はやはり売り切れで入荷日も未定との事。
も~、何とかして下さいよ庵野総監督ぅ、って言いたい気分です(笑)

危険深度:ネタバレ全開

(つまり、ストーリーを言っちゃいますよん♪)









ヱヴァ仮設5号機で健闘するマリ活躍するも、いきなり消滅させられた不遇の5号機
印象に残ったエピソードを紹介していきますね。
さて、冒頭はなんと新ヒロインのマリの活躍から始まっちゃいます。
北極にて封印を破って動き出した第3の使徒を撃退するため(多足歩行型)ヱヴァ仮設5号機を急遽任されたマリは慣れないシステムに苦しみながらも使徒殲滅に成功します。
しかし、その際ヱヴァ仮設5号機は消滅します(後にヱヴァ仮設5号機消滅は自爆プログラムをセットした加持の謀略であり、碇指令の命令によるものである事がわかります)
しかし、マリはマリで彼女の思うところで動いている事も分かります(彼女の狙いは分かりませんが)

シンジくんは父である碇指令と亡き母の墓参りに来ていました(実は父と息子の和解の糸口を作るためにミサトさんが無理矢理シンジくんを連れてきていた)
碇指令を迎えに来たこのVTOL機にレイも乗っています。シンジくんはミサトさんと帰ります。
その帰り道、第3新東京市は第7の使徒の攻撃を受けます。
シンジくんがヱヴァ搭乗に間に合わない中、第3のヱヴァである「ヱヴァ2号機」が現れ、鮮やかに使徒を撃滅します。
アスカは優しい少女にその中に乗っていた人物こそ、ファンが待ち望んでいた(改名しちゃったけど)式波・アスカ・ラングレーでした(以後アスカと書きます。デフォね(笑))
名前は変わってもアスカはアスカでした。
今回彼女はTV版と違い、母親にまつわる心の深い傷は見えず、エリートであるが故の孤高の人物として描かれています(幾分性格も丸くなっていますね)
しかし、今作での彼女は「出番の多い脇役」になってしまっています(その反動でしょうか、サービスカットはバンバン出ます(笑))
アスカはTV版同様ミサトさんの家に住む事になります。
最初アスカはシンジくんに「お払い箱よ」って彼を追い出す腹でしたが、ミサトさんの「上司命令」でシンジくんと共に一つ屋根の下で暮らす事になります(ミサトさん曰く「二人に足りないものはコミュニケーション能力」確かにね(笑))
あ、それと「加持さんLOVE」描写は一切ありませんでした。
今回加持さんはミサトさんの元恋人で、シンジくんを見守る役割を演じます(ちなみに今回加持さんはシンジくんにセクハラします(爆))

なんだか妙に好きだったりするアスカのカット途中でトウジやケンスケも交えてレイやアスカと一緒に加持さん主催の「社会科見学」としてセカンドインパクト以前の海洋生物を保護している海洋研究所(正式名称失念)に遊びに行きます。
このあたりのお話は作中でも箸休めの感のある安心して見れるエピソードでした。
施設見学前に子供達は恐ろしいくらいの行程を踏んで「消毒」されてしまいます。
そのアタフタぶりが面白おかしく、またサービスカットでもあったりしました(笑)
ここで予告でも見られた水槽の中にいる魚達を一緒に見るシンジくんとレイの短いやりとりが描かれます。
狭い水槽にいる小魚達にレイは、
「この子達はここでしか生きられない。私と同じ」
っと言います。
僕は君の何を見ているんだろうそして、君は何を見てるの?
この言葉はシンジくんの記憶に、レイのイメージと共に強く残る事になります。
お昼の時間になり、みんなに出したお弁当はシンジくんの手作りでした(しかもかなり美味しい)
彼の意外な才能にみんな盛り上がります。
ただ、レイはもとより肉嫌いであったためシンジくん手作りのお弁当は手つかずのままでした。
シンジくんはそれをとがめる事もなくポットに入れてきた味噌汁をごちそうします。
レイは素直に言います。
「美味しい」
手作りの食事は人を和ませ、楽しい雰囲気を形作る。
レイはそれを経験で感じる事になります。
彼女はいくつかの経験を経て、この後意外な行動に出ます。

衛星軌道上から自らの身体とATフィールドを質量爆弾として落下させ、NERV本部を破壊しようとする第8の使徒が攻めてきます(デザインはリニューアルされています)
ミサトさんの出した作戦は「使徒を地上でヱヴァで受け止め撃滅する」という無謀なものでした。
ご近所迷惑ATフィールド全開!(笑)い、痛いです。
レイは使徒のコアを直掴みします。アスカの戦闘能力は相変わらず
作戦はシンジくんとレイが受け止め、アスカが使徒を仕留める形でなんとか成功します。
アスカは単独行動を望んでいたものの、一人では作戦を完遂できなかった事を自覚します(でも、彼女はそれを歪めず、事実として受け止めます)
アスカはエリートで、今までも一人で全てをこなしてきた。
一人で生きてきて、孤独を感じる事はなかった。
しかし、今の彼女は人を求める様になっていた。
その夜、アスカはいきなり寝てるシンジくんの隣に寝てしまいます(「こっち振り向かないで」と言っていましたが)
何でこんなに一人が寂しいのかな......なんで人の側にいるのって落ち着くのかな?
アスカはシンジくんが先の作戦中シンジくんがとっさに自分の事をアスカと呼んだ事に気がついていました(それまでは「式波」と呼んでいました)
そこで自分の事をアスカと呼んで良いと言います。
その代わり、シンジくんの事は「バカシンジ」と呼ぶとの事でした(ちょ、ちょっとね(^ ^;))
アスカはシンジくんや周りの人たちの影響で、他人を受け入れる様になっていました。
ただ、アスカは自分が思っている以上にシンジくんが気になる存在になってしまっている様でした。

シンジくんはアスカやミサトさんの分までお弁当を作っていましたが、レイにもお弁当を作ってあげます。
この時、レイは思わず、
「ありがとう」
って言います(この時、レイはほんのりほほを赤らめていました)
その夜、レイは自分の行動に戸惑います。
「ありがとう」
感謝の言葉、初めての言葉。
無意識にシンジくんに向けた言葉でしたが、それは敬愛する碇指令に対してさえ言わなかった言葉なのですから。

やっぱりこのキャラはレイでした。翌日レイは学校を休みます。
シンジくんは彼女の事を心配しますが、レイはセントラルドグマの水槽の中でした。
ここでTV版でも印象深かった台詞である、
「レイ、食事にしよう」
と碇指令はレイに言います。
ここで初めて碇指令とレイの二人きりの食事風景が描かれます。
碇指令は普通の食事でしたが、レイは錠剤やカプセルをまとめて飲んでいるだけでした(状態維持?)
今日のレイはいつになく饒舌でした(普段の彼女と比較しての事)
碇指令に、食事は楽しい?、人と一緒に食べるのは楽しい事?、料理を作ってあげるのは楽しい事?、っとレイは立て続けに碇指令に聞きます(碇指令の返事はもっぱら「ああぁ」という程度の短い返事だけでしたが)
ここでレイは意外な事を碇指令に切り出します。
シンジくんやみんなを呼んで碇指令にも来てもらって一緒に食事をしたいと。
碇指令は最初時間がないといいかけますが、レイに今は無き妻であるユイのイメージを重ね、レイの願いを承諾します。
かくして、レイ発案、シンジくんと父である碇指令の仲を取り持つ食事会が企画されます。

今のところ、まだ「謎の少女」マリシンジくんは愛用のSDATを学校の屋上で寝っ転がりながら聞いていました。
そして、ここで「どこのエOゲ?」って言いたくなる様な強制ボーイ・ミーツ・ガールが発生します(笑)
「どいてどいて!」
ってけたたましい声と共にマリがパラシュートで降りてきます(これは想定外の展開でした)
マリはシンジくんと衝突。
シンジくんはマリの下敷きになりますが、彼女の豊かな胸の谷間に顔が埋没するという主人公の特権の様な展開になります(マリが離れた後「ぷは」ってなるのが笑えました(笑))
「眼鏡眼鏡......」
ここでマリが極度の近眼である事が分かります(それで良くヱヴァパイロットになれたね(笑))
どうも彼女は秘密裏に第3新東京市に潜入を図ったようですが、私服にパラシュートというアンバランスな装備での潜入でした(彼女の属する組織は分からないままでした)
「じゃあね、NERVのワンコくん」
その言葉を残してマリは去っていきます。

その夜、レイは真剣な眼差しで台所にて包丁を持っていました。
翌日レイは学校に登校します。
そして、なんと教室に入る前に「おはよう」と教室のみんなに挨拶をします。
どよめくクラスメイトでしたが、シンジくんはそれより休んでいた事を心配し、レイの側に来ます。
レイの指先は細かい傷があり、バンドエイドも巻かれていました(それはリツコさんが巻いてくれたとの事)
「どうしたの?その指」
「内緒。もう少し上手くなってから話すわ」
そういうレイは嬉しそうな幸せそうな表情になっていました。

アスカはアスカで気がつけばとても気になる存在となっていたシンジくんのために家で料理を作っていました。
それを早めに一時帰宅していたミサトさんに見つかってしまいます。
アスカ曰く、
「ヒカリのためよ」
って言い訳する始末。
まぁ、ミサトさんには見透かされていましたが(笑)
ミサトさんはここでアスカに招待状を渡します。
送り主はレイ。
食事会の招待状でした。

物語はここで少し動きます。
ヱヴァ4号機の起動実験失敗に伴い(ヱヴァ4号機は消滅)アメリカからのごり押しで実験機体であるヱヴァ3号機を押しつけられ、その起動実験をNERVで行うハメになります。
この世界では各国のヱヴァ所有台数は3機と条約で決められており、EU所属機であったアスカのヱヴァ2号機はヱヴァ3号機起動実験のあおりを食らって封印凍結と相成ります。
アスカは世界で唯一の自分の居場所を失ってしまいます。
帰り道、乗り込んだNERVのエレベータでアスカはレイと鉢合わせになります。
これもTV版にもあった印象的なシーンですがその意味するところは全く違うものでした。
しばらくの無言の後、なんとレイから話しかけてきます。
あなたにはヱヴァに乗らない幸せもある、と。
いくつかのやりとりの後、アスカは怒りにまかせてレイをはたこうと手を上げますが、それをレイは軽く押さえます。
その手には更に増えた小さな傷と更に数を増したバンドエイドが巻かれていました。
アスカの指にはわずかに2枚。
その数はそのままシンジくんへの思いを表している様でした。
アスカは頭に登った血も冷め、エレベータを出ようとしますが、最後に気になる事を聞きます。
「で、どうなの?バカシンジの事は(好きなの?)」
最初、分からないと言っていたレイでしたが、彼女なりの言葉で想いを語ります。
「シンジ君と一緒にいると気持ちがポカポカする」
そして、シンジくんには碇指令と一緒にいて『ぽかぽか』して欲しいと自分の願いを語るのでした。
アスカは呆れかえってその場を去ります。
「それって『好き』って事じゃん!」

アスカはその夜、改めてヱヴァ3号機起動実験の予定日を確認します(担当パイロットは未だ未定でした)
それはレイの食事会の予定日と重なっていました。
そして、意を決してその起動実験に志願します。
そのままではシンジくんやレイに決まる可能性もあったため、その代わりにアスカは志願したのです。
アスカは生まれて初めて自分のためではなく、人のためにヱヴァに乗ります。
アスカは実験場に向かう車の中でレイのメッセージを受け取ります(携帯でね)
レイの言葉は一言、
「ありがとう」
でした。
シンジくんを間に挟んでの二人の関係でしたが、思いやりと優しさが重ね合わされた良い関係になっていました。
しかし、これが悲劇の始まりである事を二人は知らなかったのです。

着々と準備が進むヱヴァ3号機起動実験。
現場で指揮を執るミサトさんにアスカから守秘回線で私的な連絡が入ります。
アスカは自分の事を語り始めます。
その語り口にミサトさんは彼女が優しくなり、他を受け入れる事が出来るまでに成長した事を感じ取ります。
ヱヴァ3号機のコクピットに入ったアスカは、
「そっか、わたし、笑えるんだ」
っと今の自分の幸せをかみしめる様に言っていました。
今回のレイの変化は良かった。しかし、このタイミングで浸食型使徒の攻撃が始まります。
使徒に奪われたヱヴァ3号機は司令室からの制御を離れ、アスカを浸食し、巨大なエネルギーを発して爆発します。
それはレイの食事会の直前の事でした。
レイはNERVの関係者からそれを聞きます。
レイの私室の狭い台所には料理がナベから吹きこぼれていました。
どうやら料理はシチューの様でした。
物語は日常を離れ、凄惨な戦いに移ります。

NERVで指揮を執る碇指令はヱヴァ3号機を破棄、改めて使徒として攻撃命令をかけます。
逡巡するシンジくん。
コクピットでもあるエントリープラグが放出されていない事に気がつき、その中にアスカがいる事を確信します。
そのため、彼はヱヴァ3号機を攻撃できないでいました。
逆にヱヴァ3号機は初号機の首を締め上げ、さらに浸食までしていました。
戦う事を命じる碇指令でしたが、シンジくんはアスカとは戦えない、自分が死んだ方がマシだとさえ言います。
闘争本能をむき出しにしたヱヴァ初号機碇指令はここでシンジくんでの作戦遂行を断念、シンジくんとヱヴァ初号機の回路を切断、かねてより導入していた無人システムであるダミーシステムを起動させます。
ヱヴァ初号機が全ての抑制を払って反撃、一気に形勢は逆転、ただ一方的な殺戮となります。
ここで意外な演出が入ります。
それは、こんな凄惨な殺戮シーンに似つかわしくない歌が流れるのです。
その流れた歌とは名曲「今日の日はさようなら」でした。
これは辛かった。
せっかく仲間として、友達として良い距離に近づけたと思った矢先の事でしたから。
この状況と切ない歌詞とが絡み合ってたまらないシーンとなっていました。
最後にアスカのいるはずのエントリープラグをヱヴァ初号機が噛み潰して戦闘は終了します。
アスカは辛くも生き延びますが、使徒からの精神汚染を受け、以後監視対象となります。

シンジくんは自分の手でアスカを殺させようとした碇指令に怒りをぶつけます。
しかし、NERV本部の上部をわずかに壊しただけで、碇指令の命令によるヱヴァ初号機内LCLを最大濃度にしたことでシンジくんは気絶します。
シーンはシンジくんの心象風景を表す電車に移り、その中である事が語られます。
それはシンジくんの愛用していたSDATはもともとは父、碇指令の持ち物であった事。
それを聞いていれば碇指令が自分を守ってくれる様に思えた事。
それが自分の思い込みであった事。
そんな思いを巡らしているうちに、シンジくんは現実世界に目覚めます。
現実世界でシンジくんは父、碇指令との決定的な溝を感じました。
シンジくんは以後ヱヴァに乗らない事を決め、第3新東京市を出て行きます。
シンジくんは全てを捨てたため、みんなに別れの挨拶もせず去っていきます。
レイはシンジくんが去った後、彼の愛用していたSDATをゴミ箱から見つけます。

最強にして一番可哀相なやられ方をするゼルエルそこに最強の使徒である第10の使徒が現れます。
あっさりと地表からジオフロントまでの装甲板を撃ち抜かれ、NERV本部に使徒は肉薄します。
そこにどういう手段を取ったのかマリが新しいピンクのプラグスーツに身を包んでアスカのヱヴァ2号機を鮮やかに操縦、第10の使徒に対抗します。
しかし、らちがあかない状況にマリは裏コード「ザ・ビースト」を発動。
ヱヴァと操縦者に多大な負担をかけるヒトを捨てた「獣化第2形態」で挑みます。
しかし、それでも第10の使徒の強固なATフィールドを打ち破るには至りませんでした。
そこに片腕だけ修復されたレイの乗るヱヴァ零号機が大型ミサイルを抱えて特攻します。自分のATフィールドを全開にし中和を試みますが力が足りませんでした。
「碇君がエヴァに乗らなくてもいいようにする」
レイの座席にはシンジくんの捨てたSDATがありました。
彼女はまさにシンジくんのために戦っていたのです。
まだ余力の残っていたマリのヱヴァ2号機はATフィールド中和に力を貸し、突破に成功します。
第10の使徒は大型ミサイルの直撃を受けます。
レイはぎりぎりのところで2号機をはね飛ばし爆発からマリを守ります。
「逃げて2号機の人。ありがとう」

しかし、第10の使徒は生きていました。
そして、動く力もないヱヴァ零号機を捕食、ヱヴァの特性を吸収してしまいます(パターンが使徒からヱヴァ零号機に変異する) それを目前で見ていたシンジくんは矢も盾もたまらずNERV本部に向かいます。
格納庫では最後に残る希望として初号機をダミープラグにて碇指令が起動を繰り返していました。
「なぜここにいる」
「僕をヱヴァに乗せて下さい。僕はヱヴァンゲリヲン初号機パイロット、碇シンジです!」
その間にも第10の使徒は侵攻を続け、とうとうNERV司令部に到達します。
そこにぎりぎりのタイミングでシンジくんのヱヴァ初号機が現れ第10の使徒に反撃します。
第10の使徒をカタパルトに押しつけ初号機ごと地表に打ち出します。
初号機の容赦ない攻撃が繰り返されますが、突然初号機のエネルギーが切れます。
第10の使徒はこの機とばかりに反撃します。

しかし、この第10の使徒にヱヴァ零号機、レイが捕食されていた事を見ていたシンジくんは驚異的な意志の力を見せます。
「綾波を・・・返せ!」
ヱヴァ初号機は再起動します。
そして、今までになかった使徒の様な目から光線を放ち圧倒的な力で第10の使徒をねじ伏せます。
むき出しにした第10の使徒のコアに初号機は手を当て、シンジくんはレイのサルベージを試みます。
ヒトに在らざる使徒の中枢であるコアへの侵入はシンジくんにもかなりの負担をかけていました。
「綾波!」
「もういいの、私は死んでも代わりはいるもの」
「綾波は綾波だ!」
泡立つ様に使徒のコア上に浮かぶ上がる複数のレイの顔、しかしシンジくんはそれらには目もくれず自ら使徒を浸食していきました。
その向こうにレイが見えました。
「来い!綾波!!」
その声を聞き、レイは手を伸ばします。
シンジくんはその手をぐいっと引き上げます。
レイはその勢いでシンジくんの胸元に飛び込む形になります。
シンジくんはレイを固く抱きしめます(それも愛おしそうに)
シンジくんはここで優しくレイに話します。
「父さんの事、ありがとう」
「ごめんなさい。私、何も出来なかった」
幸せそうな二人でしたが、シンジくんが見せた力はヒトの範疇を超え、神の領域に達しようとしていました。
リツコさんの言葉では新しく世界が生まれるとき、古(いにしえ)の生き物は全て滅ぶと。
セカンドインパクトの続き、サードインパクトが始まる。
「世界が、終るわ」

リツコさんの不吉な言葉の後、エンディングが流れ始めます。
劇場に足を運んだ方々はごく少数の人を除けば勝手知ったるヱヴァの世界。この後に何かがあると分かってその場を離れる事はありませんでした。
実際には軽快な音楽をバックにミサトさんナレーションの次回予告があると思っていたら・・・・・本編がまだ続いていました。
サードインパクトが唐突に途中で終わります。
ヱヴァ初号機は1本の槍状のもので串刺しにされます。
その槍を投げたのはマークシックス(Mark-6)と呼ばれるヱヴァ6号機。
そして、それを操縦するのはあの渚カヲルでした。
彼は言います。
「碇シンジくん。今度こそ君だけは幸せにしてみせるよ」

カオルくんご登場。シンジくんの操は如何に?(爆)

物語がどんな展開を見せるのか、全く分からないまま『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』は終わりました。
まぁ、予告では色々と言っていましたが、文章も長くなった事ですし、ここでは語らない事とします。
いやぁ~ヱヴァのテーマが「碇シンジの物語」からいつの間にやら「レイとの愛の物語」になるとは思いませんでした。
ヱヴァ初号機の再起動が純粋自己防衛本能(ユイさんの想い)ではなく「(僕の)綾波を返せ!」ですからね。
シンジくんが熱い!情熱少年です。
レイやアスカが優しくて思いやりのある良いキャラになってましたね。
TVシリーズにあった「毒」が抜かれて物足りない方々も多くいらっしゃると思いますが、私はこれでちょうど良い。いや、とても良い。
そんなこんなで、私にとって、今回のヱヴァはとても好きな物語なんですね。

実は私は昔、NiftyのGAINAXフォーラムに当時流行っていたエヴァショートストーリーを見よう見まねで書いていたんですね。
そこで私はシンジくんのエヴァ初号機が残骸となった零号機を捕食。自らのコアでレイを再生するという話を書いていたんです。
話の形は違うものの、自分の思い描いていた映像に近いものがこうしてスクリーンで見れるというのは、何やら感慨深いものを感じました。
ぶっちゃけ見たいものが見れたんですよね。
ホント言うとですね、今回既に『破』を2回見てますが、もう2~3回は見に行きたい気分なんですよ(マジな話、もう1回は見るな、たぶん(笑))
不思議に私の琴線にマッチしたヱヴァ。
ホントに面白かった。
次の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q quickening』が本当に楽しみでなりません。

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2009年6月14日

●Phantom - Requiem for the Phantom - 第9話 「名前」 レビュー

私はどうすればいいの?……玲二。

このレビューはネタバレです。ご注意ください。

アインと玲二、あてのない逃避行を描いたエピソード。
ささやかな希望と、大きな挫折。
運命は大きく二人を翻弄します。
※今回レビューよりツヴァイを玲二と書きます。

アインは前回の弾丸摘出後、気を失ったまま玲二に車に乗せられていました。
玲二はアインの体に負担がかからないようにとシートを横にしていました(彼の本質はやはり気配りの出来る優しい少年ですね)
故郷の夢を見ているのかな?アイン、今はゆっくりと休むといい
ようやく目の覚めたアイン痛々しい血の跡
やがてアインは目を覚まします。
自分の受けた傷と治療の跡を確認します。
「目が覚めた?」
アインは声の主が玲二である事を意識します。
しかし、アインは名にも答えませんでした。
しばらくして、
アインのサイスへの妄信ぶりは何かを逸脱しています。「降ろして」
アインのある意味想定できた、無茶な言葉に玲二は冷静な声で応えます。
「降りてどうする?」
「マスターと合流する」
アインはサイス=マスターの盾となり、武器となって戦う覚悟でした。
しかし、玲二は、
ここは冷徹に言っておかないと「サイスは組織を裏切って逃げた。君はあいつに捨てられたんだ」
玲二はアインに諦めてくれるようにとあえて冷たい言い方をします。
しかし、アインはそれでも頑なに、
「状況は継続している。私はマスターと合流する。合流が無理なら逃亡の支援を行う。攪乱すれば組織の追っ手を割く事が出来る……止めて」
「ダメだ。任務を継続するのならこのまま僕といるんだ。逃亡中のサイスは今もPhantomに守られている。サイスには常にPhantomの恐怖が付きまとっている。だから、組織も迂闊には手が出せない。もしここで(アインが)捕まれば、サイスにとってもマイナスになる」
この部分の玲二のアインに向けた台詞は実は詭弁です。
アインがサイスのもとに向かうという事は死地に向かう事と同じ。
よくて生き延びたとしても、またサイスに利用されるのは目に見えている。
数字を意味する名前を与えられ、死んだ目でまた人を殺し、地獄の底を這いずり回る愚をアインにはさせたくない。
今のアインにはまだ玲二が『アインを死なせたくない』と言う感情を持って行動している事は理解できません。
だからこそ、玲二この状況に対処するために冷静な判断をアインに提示して見せたのです(少々無茶な論法ではありましたが)
アインの今まで生きてきた世界では、利害の一致ほど確かな信頼関係はないからです。
私はあなたが羨ましい。「変わったわね、ツヴァイ」
「変わった?」
「ええ、昨日とは別人の様。そうね、あなたはもう玲二じゃない。吾妻、玲二だから」
「聞いてたのか」
アインは夢うつつの中で聞いていたのです。
「あなたには帰る場所がある。本当の自分がある。でも……私には、何もない。私は『アイン』在るのは数字だけ。帰る場所はマスターの元だけ」
「そんなこと……」
「私には何もない。マスターの付けてくれた『アイン』という名前しか」

アインは精神的にサイスの手から逃れられないでいる

「アイン……」
「それが私。誰でもないPhan……」
アインは怪我からの疲労なのか、また眠りに落ちていきます。
『それは違う』
玲二は届かない心の声でそれを否定します。

玲二はガソリンスタンドに寄ったついでに隣の雑貨屋で痛み止めとミネラルウォーターを買います。
そこで街のチンピラに絡まれ、店のトイレに連れて行かれますが、玲二は軽くその連中を締め上げます。
玲二の手痛いしっぺ返しを食らった哀れなチンピラ玲二は人の目をしていた。だから殺さなかった。
しかし、このことがチンピラに否応なしに玲二の事を覚えさせる事になります。
玲二が車に戻ると、アインはちゃんといました。
「(痛み止めを)飲んでおくといい」
「私がいなくなってると思わなかった?」
「君は無茶だけど、バカじゃない」
なぜあなたは私をそんなに信用できるの?信用したいからしてるのさ
玲二はパートナーであるアインの気性を理解していました。
でも、その理解は彼女に対して安心感と歯がゆさが伴うものでもあったのです。

同じ頃、強奪されていた500kgのコカインを積んだトラックが発見されていました。
その報はすぐさまインフェルノ上層部に伝えられました。
クロウディアとボディガードとしてリズィは呼び出しをくらい、最高幹部アイザック・ワイズメルから、
呼び出し食らったお二人さんクロウディアにとって敵であるワイズメル
「サイスは手前(てめえ)の飼い犬だ。飼い主がけりを付けろ」
「承知しています」
上司が部下の始末を付けられなければ同罪となる厳しい掟です。

日本のアニソン特集だったら笑うぞ(笑)一方、玲二とアインはつかの間の安息を得ていました(車で移動中です)
ここでちょっと視聴者(というか私)が不思議な感覚を覚える事がおきます。
玲二の運転する車のラジオからPhantomの主題歌である『KARMA』が流れてくるんですね。
アインはこの曲が流れ初めて玲二がボリュームを上げるのを見て玲二に聞きます。
「知ってる曲?」
「あ、ごめん。うるさかった?」
「なんて曲?」
「さぁ、なんて曲だったかな。タイトルは忘れたけど、街でよくかかってた」
「日本ではみんなそんな曲を聴くの?」
いや、ごく一部の方々だけです(笑)
「音楽の趣味は人それぞれさ。ロスも日本も変わりない」
久しぶりに懐かしい話に興じる玲二「日本の話を聞かせて」
玲二は躊躇しますが、
「思い出したんでしょ?吾妻玲二として暮らしていた時の記憶が」
「そうだな……」
たぶん、アインはあまり深く考えずに玲二に対して過去の記憶の話を聞いたと思います。
精神的に寄る辺を得て笑顔で思い出を語り続ける玲二に対し、アインの表情は曇ったままです。
『アイン』という名前以外何もない自分と、苦痛を伴うかもしれないが過去の記憶を得て、精神が安定し強くなった玲二との落差を感じている様に思えます。
『やはり自分には何もない』
その苦しさがかえって増したようです。
私の知っている彼がどんどん変わっていく……このシーンで時間描写に主題歌『KARMA』が使われましたが、ドラマの中で自分がリアルに聞いている音楽と、アニメのキャラクター達が同じ曲を聴くというのは不思議な雰囲気を感じるんですね。
私たち視聴者はアニメを心のどこかでは間違いなく絵空事と感じてみています(そりゃま、そうですが(苦笑))
そのアニメの世界で自分が聴いている曲が流れ出し、キャラ達がその曲について語ると、私たちのリアルな世界とアニメの世界の境界線が曖昧に見えてくるんですね。
良いとか悪いとかじゃなくて、どことなく個人的に違和感を感じる瞬間なんですね。

その夜、ロスの空港にてある電話が取り交わされていました。
「俺だ、ブツは予定通りに……」
『旅のご無事を』
梧桐大輔とクロウディアでした。
この梧桐の兄貴はなぜかネクタイを愛用してるんですよねクロウディアもある思いで今回の騒動を起こしています。
「なぁ~に、言ってやがる。逃亡ルートや搬入ルート、全てアンタの手の上で踊ってるんだぜ。落ち着いたら連絡する」
『今後とも良いお付き合いを』
そこで電話を切った梧桐大輔に舎弟の志賀が苦言を呈します。
「信用ならない女です。気を許せば、梧桐組そのものを売りかねない」
「だからなんだ。俺たちは俺たちであの女を利用するだけだ、だろ?」
「リスキーです」
「今更腰引けてんじゃねぇぞ、志賀。腹決めろ。駆け上がるぜ、俺は」
この人も、背中に紋々背負ってるのかな?リスキー女、我が世の春(笑)
その『リスキーな女』と呼ばれているクロウディアも気分は最高でした。
梧桐組に恩を売り、サイスを追い詰め、その結果自分の足下が盤石になる、その一歩手前、チェックメイトまで来ている。
ここまで来れば自分の描いた筋書き通りに事が運ぶのは間違いない。
摩天楼の夜景さえもが自分の手にある様な錯覚をクロウディアは覚えます。
『失ったものを取り返す。全ての物を手に入れる』
クロウディアの野望は大きく前進しました。

帰れる人は帰るべきよ。玲二とアインの乗る車は郊外を走っていました。
「吾妻玲二、あなたは帰るべきだわ、あなたは」
アインは玲二の過去の話を聞き、考えた末の答えでした。
「帰る?」
「ええ」
「どこへ帰れって言うんだ」
これはかつてアインが言った言葉のままです。
殺し屋の帰る場所はない。
「この半年間、僕が何をしてきたか知ってるだろう。今更戻れる訳ない」
「でも、あなたには過去がある。吾妻玲二としてこの世に存在している」
かつての持論を曲げてのアインの発言ですが、これはやはりアインの優しさと思います。
人形と揶揄されるくらいに無感情な彼女ですが、帰れる場所がある人は帰るべきである。
それがツヴァイならなおのこと。
「君だってそうだ。ちゃんとここで……」
「あなたは、私にないものを持っている。自分を証明するものがある」
それは物証的なもの、パスポートでした。
これが君と僕との差なのか?あなたと私は違う
ダッシュボードに入れっぱなしになっていた自分のパスポートを玲二は差し出し、
「これがあるかないかがそんなに重要なのか?」
「そう、それがあなたがあなたである証(あかし)。私にはないもの」
自分のアイデンティティを証明するパスポートが、実はアインとの間に立ちはだかる壁とわかると、玲二はそのパスポートを破り始めます。
この行為にさすがのアインも声を荒げます。
「何をするの玲二!」
こんなもの、羊のエサにくれてやる(ちょっと強がり(笑))ちょっと、パスポートの再発行手数料意外に高いのよ(……はい?(笑))
その声を無視して細かくちぎったパスポートを車の窓から外に放り出します。
「あなた、自分が何をしたかわかってるの?あれはあなたの……」
そのアインの声を遮る様に玲二は、
「ただの紙切れだ。僕を僕でいさせてくれるのは過去の記憶だけ。そして、それは君にも……。前に話してくれたじゃないか、夢の話。色の記憶。眩しいくらいの明るさと強い風。故郷の記憶だろ?」
でもね、私はそれを知るのが怖いの「曖昧な記憶よ。故郷だという保証もない」
「でも、君の記憶だ。君にもちゃんと過去がある。『アイン』なんて言う数字じゃない。本当の名前が……」
アインはここに来てたぶん違和感を感じていたと思います。
人は自分を自分でいさせてくれる過去の記憶を得ると、ここまで芯の通った強さをもてるのか。
玲二の変化に彼女は戸惑っていると思います。
でも、それだけではないんですね。
玲二はスタートラインの違いこそあれ、自分と同じ立場にいて、同じ苦しみを味わうアインを助けたいと思う情の通った気持ちを持っている。
それは記憶を取り戻す戻さない以前の玲二の優しい想いなんですね。
アインはそれをまだ理解できない。
「なぜ、なぜ私に構うの?あなたには何の得も……」
この後、アインはこっそり玲二の名前の部分を取ります。「君を死なせたくない。見殺しにしたくない。誰のためでもない。これは僕自身の意志だ。それを貫く。それが僕の自分である事の証だ。判子と紙切れで裏付けて貰う必要なんて、ない」
自分の存在を決めるのは自分自身の意志である。
寄る辺を得てそれにしがみつくものではない。
玲二は断言します。
しかし、アインはまだこのことを理解していなかった。
アインはこの2年間、蓄積され続けてきたサイスへの依存度は、玲二の想像を超えるものでした。

深夜の道路で検問がしかれていました。
インフェルノの力が及んでいるのかは分かりません。
「免許証を」
警察官は決まり文句を言って玲二の差し出した偽造免許証を受け取ります。
「どこから来た?」
「ロスから、友人を訪ねて」
「ウォレス=楊、20歳。年齢より若く見えるな」
「よく言われます」
今は羊の皮を被っている玲二アインもすかさず良い演技をします。
「隣は?」
「妹です」
「顔色が悪いんじゃないか?」
出血の影響がまだ残るアインでしたが、警官への愛想笑いで玲二の演技を助けます。
「ええ、長旅で。車酔いです」
「OK、行っていい」
さしたる問題もなく玲二は検問を抜ける事が出来ました。
「上手くなったわね」
「ん、さっきの演技?何言ってるんだ。君に教わったんじゃないか」
精神的に安定してきた玲二に対し、情緒不安定が進むアイン
自分と拮抗する殺しの技を有し、それを補完するテクニックも申し分なし。
今はもう既に玲二はツヴァイとして教えていた頃の人物ではない。
むしろ、今は芯の通った自分よりも強い存在となっている。
自分は必要ない。
アインは自分の半身とも言えた玲二の自分を越えた大きな変化に拠り所のない孤独感を増していきます。

行くあてはあるの?玲二は通り道にあったモーテルで一泊する事にします。
「これからどうするつもり?」
アインは玲二に問います。
玲二は部屋の保安状況を確認しながら答えます。
「移動を続けながらこうやって君を休息させる。そして、君の傷が治ったら遠くへ行く」
「遠く?どこ?」
「最後まで」
あなたはそこまでする必要ないのに……自分で決めた事をやるってのは気分いいものだよ。
つまり、死ぬまで付き合うという事です。
この答えにはアインも驚きを隠せません。
「そんなこと……」
しかし、言葉の重みの割には玲二はすがすがしい顔で答えます。
「言っただろ?自分の意志で決めたって」
アインは戸惑うばかりです。
彼女には自分のアイデンティティを固定するものがないからです。
今まで味わった事がなかった状況にただ、戸惑うばかりです。
玲二の思いやりでさえすら理解できないのですから。
「何か食べ物を買ってくるよ」
アインは一人部屋に残されて今の状況に、今の自分に思いを巡らせる事になります。

この短い間にアインは自分を追い詰めます。玲二は近くのファーストフードで今夜の夕食を買ってきますが、部屋には鍵がかかっていました。
ドアにノックしても反応がない。
「アイン、アイン!……!」
何かが起こった。
ドアを蹴破り、中の様子を見ると照明が消えていました。
そして、奥のバスルームの照明だけが付いていました。
その中で身じろぎもせずに自分のこめかみにUSPを押しつけているアインの姿がありました。
死にたい、けど撃てない……玲二はそっと静かにアインの側に近づきます。
見るとアインはUSPのトリガーに指を合わせているものの、その指先は逡巡を続けていました。
玲二は優しく、ゆっくりとした動作でアインから銃を取り上げます。手違いがない様に撃鉄に指を挟みながら。
「昨日まで恐怖を感じなかったのに……ダメ、指が動かない。玲二、あなたが撃って。私を楽にして」
「勝手すぎるだろ、どうしたんだアイン?」
死なせたくないと思った人から殺して欲しいと言われるのは玲二としては我慢ならない話と思います。
私は本当は弱い人間だったのよ。しかし、アインもまた苦しんでいるのです。
「君は僕よりもずっと強い人間だったじゃないか。」
「そんな事ない。私はただマスターのために、そのためだけに。例え組織を敵に回そうとマスターの指示さえあれば……なのに、今の私は何のために生きているの?組織に追われて、ただ逃げて、引き金も引けない」
玲二はただ、黙ってアインの『告白』を聞いていました。
「昨日、あそこで死んでいれば少なくともアインのままで死ねたのに……」
「そんな……僕たちは死ぬために戦って来たのか?」
玲二はアインに良く話を聞いて貰うために彼女の側に寄り、目線の高さを合わせます。
「違う生きるために戦ったきたんだ。死んで欲しくないんだ。こんなバカな事で」
僕らの距離って、いつの間にこんなに近くになったのかな私、わからない。どうすればいいの?
君に生きていて欲しい。どうすればいい?そんな問いかけが聞こえてくる様なアインの切実な瞳に玲二は更に言葉を紡ぎます。
「生きてて欲しいんだ。ただ、それだけの事なのに」
玲二の切なる願いです。
「私はインフェルノに追われている。もし、今ここに追っ手が来たら、あなたは組織と私、どっちに銃を向ける?」
「決まってる。組織を撃つ。僕は、僕の意志で引き金を引く」
「どうして、あなたはそうまでして生き抜くの?そういう生き方を私にもしろって言うの?」
なぜあなたは私を選んでくれるの?そんな生き方、私には辛すぎる。
「嫌なのか?」
「だって、私もう誰でもない。何もない。生きている理由も役目も」
「アイン……!」
ここで玲二は一つの考えにたどり着きます。
「『アイン』は止めよう。『アイン』なんてただの数字だ。名前じゃない。君には新しい名前が必要だ」
アイデンティティを自分に固定させるための、名前です。
「名前?」
「Phantomでも数字でもない。君は君として生きていくための、名前……『エレン』、『エレン』だ。今から僕は、君をエレンと呼ぶよ」
「どうしてエレンなの?」
エレン、君が生きるための名前だよ。ちょっと、くすぐったい感じがするね。
「理由なんていい。僕がそう決めた。殺し屋でも人形でもなく、君が君として生きていくための名前」
「エレン、なんか、変」
エレンは居心地の悪そうな、でもまんざらでもない表情を見せていました(※ここから以後、彼女の事はエレンと書きます)
「そうか。エレン探そう。君の無くした過去を」
新たな名前を得たエレンは思わぬ展開に戸惑いを隠せませんでした。
彼女は後から名前というものの価値を感じる様になります。
僕は過去を得た、次は君の番だ。君の生きる目的を見つけてあげるよ。
名前は祈りを込めたものであり、望まれて生きるためのものなのです。
エレンという名前は玲二がエレンに対してこの世で生きていて欲しいと願いが込められているのです。
そして、エレンもまた、その願いを受け、生き延びる道を選びます。
『本当の名前を見つけたら、生きる理由なんていくらでも見つけられる。例え誰かを傷つけても、自分で生きようと思う。今はまだ辛いかもしれないけど、行こう、僕と一緒に』
同じ頃、夜の道を走るピックアップトラックがいました。
運転しているのはリズィ。助手席に座るのはクロウディアでした。
リズィは安全運転ですね(笑)リズィの運転って刺激が足らないのよね(苦笑)
「アンタのお気に入り、もしこのままサイスの側に付いたら、どうする?」
「殺して」
クロウディアの答えは至ってシンプルなものでした。
翌朝、玲二とエレンはソルトレイクシティに着いていました。
「車と現金を調達してくる。1時間で戻るよ。傷は?」
「無理をしなければ大丈夫」
エレンの様子を見て玲二は車から降りようとしますが、最後に、声をかけます。
気をつけて、エレン。ええ、玲二。
「気をつけて、エレン」
「ええ、玲二」
かつてはお互いの事をアイン、ツヴァイと呼び合っていた二人は、今やお互いのパーソナルネームを違和感無しに呼び合っていました。
玲二が車から降りた後、アインは密かに隠し持っていた紙切れをポケットから取り出します。
『吾妻玲二』と書かれたパスポートの切れ端。
エレンは思い出の品を取り出します。それは玲二のパスポートの切れ端。
私はこれで普通の女の子になれるのかな?「エレン、玲二が付けてくれた名前。この名前で私は……」
言葉が続けば『新しく生きる』って続けていたと思います。
しかし、それは泡沫の夢となります。
エレンは車の外に自分を監視する男を見つけます。
直感でインフェルノ一派である事を看破します。
またその男は寄ってきた車に何かしら報告をしていました。
このままこの車にいては危ない。
また、危機が迫ってきている事を玲二に知らせなければならない。
アインは自ら囮となって側の店に入ります。
店の裏口から出たアインを男は追います。
しかし、アインはその裏をかき、男の背後につきます。
この男、インフェルノの一員でした。以前と比べてエレンは弱くなっています。
男をうとうとしたその時、エレンは傷が疼き引き金が引けなくなります。
銃声一発。
倒れたのは男の方でした。
「らしくないな、アイン。痛みなど精神力で克服したまえ」
アインを助けたのはサイスとサイスの雇ったボディーガードでした。
「マスター……」
サイスはインフェルノを追ってエレンを見つけたのです。私はアイン?それともエレン?
エレンは思わず銃を落としてしまいます。
アインとしてのサイスへの忠誠と、身をもって助けてくれた玲二との狭間でエレンは深く思い悩む事になります。

玲二はエレンがサイスの手に落ちた事も知らず、車を盗もうとしていました。
しかし、その頭にリズィのロングバレルが押しつけられます。
「終着だよツヴァイ。青臭いハネムーンは楽しかったかい?」
「リズィ」
玲二は車に押しつけられます。
銃の感触は嫌だよ。リズィは実は人の良い姉御肌の人物です。
「サイスに踊らされたようね」
「僕はサイスとは関係ない」
「どうだか」
「それもゆっくり聞かせて貰うわ。さっき知らせが入った。Phantomを尾行させていた部下が殺された。Phantomはサイスの手に戻ったわ」
「嘘だ……エレン」

玲二はインフェルノに連れ戻され、尋問にかけられていました。
リズィの容赦ない拳と蹴りが玲二に繰り出されます。
「いい加減に吐いちまったらどうだい。サイスはどこに向かった」
「知らない、僕らは」
実はこれでもリズィは手加減していたのです。更に見舞われるリズィの拳。
ここでクロウディアが助け船の様に声をかけます。
「やはり、彼は何も知らないようね。後は私にまかせて、下がっていいわ」
「その頑固さだけは認めてやるよ」
リズィはそう一言残して部屋から出て行きました。
「マイクは切ってある。何を話してもいいわよ」
エレンを失い、自分の命もあとわずかだろうと思っていた玲二は、特に語る事もありませんでした。
「アインを助けて二人で逃げる。それが君の選択だったの?バカね、君は裏切り者に荷担してしまった。疑惑の対象よ。日本に戻るところではなくなった」
この男を動かすのは簡単だわ。クロウディアは玲二の側により、怪しくささやきます。
「でも、君にはまだ最良の選択肢が残っているわ。身の潔白を証明し、アインを取り返す方法が……」
その言葉にようやく玲二は反応します。
「なん、ですか?」
クロウディアは玲二の前に銃を差し出します。
「あなたなら分かるでしょ?これの使い方」
玲二はそれを両手でしっかり受け取ります。
そして、クロウディアの意志を読み取ります。
「サイスは、僕が殺します」

僕は僕の意志でサイスを殺します。

今回も良い回だったのですが、原作ファンとしてはちょっと物足りなかった感が否めません。
原作ゲームではエレンの自殺未遂の際、彼女は自分の感情を爆発させるんですね。
そして、名前を与えられ自分というものを得たとき、彼女は涙を流してその夜は眠るんですね。
アニメ版としては全体的にしっぽりと表現されていましたね。
しかし、シリーズ構成の黒田さんはあえてエレンの感情を爆発させなかった。
それはおそらく、3部のあそこで……ってみなまで言ったら興ざめですので(ネタバレ野郎の言葉じゃないですね(苦笑))ここでは伏せておきましょう。
色気はあんましないアインの下着姿そういえばそういうシーンじゃないけど、アインの下着姿が出てきましたね。
黒を基調としたものでしたが、下はスパッツでしたね(ちなみにこの設定画は公式サイトで発表されていました)
で、ブラは黒一色ではなくデザインのしっかり入ったものでしたね。
これはアインの趣味なのか、それともサイスの買い与えたものなのか。
雰囲気的にはサイスの趣味っぽいものを感じるんですけどね(苦笑)