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2009年6月14日

●Phantom - Requiem for the Phantom - 第9話 「名前」 レビュー

私はどうすればいいの?……玲二。

このレビューはネタバレです。ご注意ください。

アインと玲二、あてのない逃避行を描いたエピソード。
ささやかな希望と、大きな挫折。
運命は大きく二人を翻弄します。
※今回レビューよりツヴァイを玲二と書きます。

アインは前回の弾丸摘出後、気を失ったまま玲二に車に乗せられていました。
玲二はアインの体に負担がかからないようにとシートを横にしていました(彼の本質はやはり気配りの出来る優しい少年ですね)
故郷の夢を見ているのかな?アイン、今はゆっくりと休むといい
ようやく目の覚めたアイン痛々しい血の跡
やがてアインは目を覚まします。
自分の受けた傷と治療の跡を確認します。
「目が覚めた?」
アインは声の主が玲二である事を意識します。
しかし、アインは名にも答えませんでした。
しばらくして、
アインのサイスへの妄信ぶりは何かを逸脱しています。「降ろして」
アインのある意味想定できた、無茶な言葉に玲二は冷静な声で応えます。
「降りてどうする?」
「マスターと合流する」
アインはサイス=マスターの盾となり、武器となって戦う覚悟でした。
しかし、玲二は、
ここは冷徹に言っておかないと「サイスは組織を裏切って逃げた。君はあいつに捨てられたんだ」
玲二はアインに諦めてくれるようにとあえて冷たい言い方をします。
しかし、アインはそれでも頑なに、
「状況は継続している。私はマスターと合流する。合流が無理なら逃亡の支援を行う。攪乱すれば組織の追っ手を割く事が出来る……止めて」
「ダメだ。任務を継続するのならこのまま僕といるんだ。逃亡中のサイスは今もPhantomに守られている。サイスには常にPhantomの恐怖が付きまとっている。だから、組織も迂闊には手が出せない。もしここで(アインが)捕まれば、サイスにとってもマイナスになる」
この部分の玲二のアインに向けた台詞は実は詭弁です。
アインがサイスのもとに向かうという事は死地に向かう事と同じ。
よくて生き延びたとしても、またサイスに利用されるのは目に見えている。
数字を意味する名前を与えられ、死んだ目でまた人を殺し、地獄の底を這いずり回る愚をアインにはさせたくない。
今のアインにはまだ玲二が『アインを死なせたくない』と言う感情を持って行動している事は理解できません。
だからこそ、玲二この状況に対処するために冷静な判断をアインに提示して見せたのです(少々無茶な論法ではありましたが)
アインの今まで生きてきた世界では、利害の一致ほど確かな信頼関係はないからです。
私はあなたが羨ましい。「変わったわね、ツヴァイ」
「変わった?」
「ええ、昨日とは別人の様。そうね、あなたはもう玲二じゃない。吾妻、玲二だから」
「聞いてたのか」
アインは夢うつつの中で聞いていたのです。
「あなたには帰る場所がある。本当の自分がある。でも……私には、何もない。私は『アイン』在るのは数字だけ。帰る場所はマスターの元だけ」
「そんなこと……」
「私には何もない。マスターの付けてくれた『アイン』という名前しか」

アインは精神的にサイスの手から逃れられないでいる

「アイン……」
「それが私。誰でもないPhan……」
アインは怪我からの疲労なのか、また眠りに落ちていきます。
『それは違う』
玲二は届かない心の声でそれを否定します。

玲二はガソリンスタンドに寄ったついでに隣の雑貨屋で痛み止めとミネラルウォーターを買います。
そこで街のチンピラに絡まれ、店のトイレに連れて行かれますが、玲二は軽くその連中を締め上げます。
玲二の手痛いしっぺ返しを食らった哀れなチンピラ玲二は人の目をしていた。だから殺さなかった。
しかし、このことがチンピラに否応なしに玲二の事を覚えさせる事になります。
玲二が車に戻ると、アインはちゃんといました。
「(痛み止めを)飲んでおくといい」
「私がいなくなってると思わなかった?」
「君は無茶だけど、バカじゃない」
なぜあなたは私をそんなに信用できるの?信用したいからしてるのさ
玲二はパートナーであるアインの気性を理解していました。
でも、その理解は彼女に対して安心感と歯がゆさが伴うものでもあったのです。

同じ頃、強奪されていた500kgのコカインを積んだトラックが発見されていました。
その報はすぐさまインフェルノ上層部に伝えられました。
クロウディアとボディガードとしてリズィは呼び出しをくらい、最高幹部アイザック・ワイズメルから、
呼び出し食らったお二人さんクロウディアにとって敵であるワイズメル
「サイスは手前(てめえ)の飼い犬だ。飼い主がけりを付けろ」
「承知しています」
上司が部下の始末を付けられなければ同罪となる厳しい掟です。

日本のアニソン特集だったら笑うぞ(笑)一方、玲二とアインはつかの間の安息を得ていました(車で移動中です)
ここでちょっと視聴者(というか私)が不思議な感覚を覚える事がおきます。
玲二の運転する車のラジオからPhantomの主題歌である『KARMA』が流れてくるんですね。
アインはこの曲が流れ初めて玲二がボリュームを上げるのを見て玲二に聞きます。
「知ってる曲?」
「あ、ごめん。うるさかった?」
「なんて曲?」
「さぁ、なんて曲だったかな。タイトルは忘れたけど、街でよくかかってた」
「日本ではみんなそんな曲を聴くの?」
いや、ごく一部の方々だけです(笑)
「音楽の趣味は人それぞれさ。ロスも日本も変わりない」
久しぶりに懐かしい話に興じる玲二「日本の話を聞かせて」
玲二は躊躇しますが、
「思い出したんでしょ?吾妻玲二として暮らしていた時の記憶が」
「そうだな……」
たぶん、アインはあまり深く考えずに玲二に対して過去の記憶の話を聞いたと思います。
精神的に寄る辺を得て笑顔で思い出を語り続ける玲二に対し、アインの表情は曇ったままです。
『アイン』という名前以外何もない自分と、苦痛を伴うかもしれないが過去の記憶を得て、精神が安定し強くなった玲二との落差を感じている様に思えます。
『やはり自分には何もない』
その苦しさがかえって増したようです。
私の知っている彼がどんどん変わっていく……このシーンで時間描写に主題歌『KARMA』が使われましたが、ドラマの中で自分がリアルに聞いている音楽と、アニメのキャラクター達が同じ曲を聴くというのは不思議な雰囲気を感じるんですね。
私たち視聴者はアニメを心のどこかでは間違いなく絵空事と感じてみています(そりゃま、そうですが(苦笑))
そのアニメの世界で自分が聴いている曲が流れ出し、キャラ達がその曲について語ると、私たちのリアルな世界とアニメの世界の境界線が曖昧に見えてくるんですね。
良いとか悪いとかじゃなくて、どことなく個人的に違和感を感じる瞬間なんですね。

その夜、ロスの空港にてある電話が取り交わされていました。
「俺だ、ブツは予定通りに……」
『旅のご無事を』
梧桐大輔とクロウディアでした。
この梧桐の兄貴はなぜかネクタイを愛用してるんですよねクロウディアもある思いで今回の騒動を起こしています。
「なぁ~に、言ってやがる。逃亡ルートや搬入ルート、全てアンタの手の上で踊ってるんだぜ。落ち着いたら連絡する」
『今後とも良いお付き合いを』
そこで電話を切った梧桐大輔に舎弟の志賀が苦言を呈します。
「信用ならない女です。気を許せば、梧桐組そのものを売りかねない」
「だからなんだ。俺たちは俺たちであの女を利用するだけだ、だろ?」
「リスキーです」
「今更腰引けてんじゃねぇぞ、志賀。腹決めろ。駆け上がるぜ、俺は」
この人も、背中に紋々背負ってるのかな?リスキー女、我が世の春(笑)
その『リスキーな女』と呼ばれているクロウディアも気分は最高でした。
梧桐組に恩を売り、サイスを追い詰め、その結果自分の足下が盤石になる、その一歩手前、チェックメイトまで来ている。
ここまで来れば自分の描いた筋書き通りに事が運ぶのは間違いない。
摩天楼の夜景さえもが自分の手にある様な錯覚をクロウディアは覚えます。
『失ったものを取り返す。全ての物を手に入れる』
クロウディアの野望は大きく前進しました。

帰れる人は帰るべきよ。玲二とアインの乗る車は郊外を走っていました。
「吾妻玲二、あなたは帰るべきだわ、あなたは」
アインは玲二の過去の話を聞き、考えた末の答えでした。
「帰る?」
「ええ」
「どこへ帰れって言うんだ」
これはかつてアインが言った言葉のままです。
殺し屋の帰る場所はない。
「この半年間、僕が何をしてきたか知ってるだろう。今更戻れる訳ない」
「でも、あなたには過去がある。吾妻玲二としてこの世に存在している」
かつての持論を曲げてのアインの発言ですが、これはやはりアインの優しさと思います。
人形と揶揄されるくらいに無感情な彼女ですが、帰れる場所がある人は帰るべきである。
それがツヴァイならなおのこと。
「君だってそうだ。ちゃんとここで……」
「あなたは、私にないものを持っている。自分を証明するものがある」
それは物証的なもの、パスポートでした。
これが君と僕との差なのか?あなたと私は違う
ダッシュボードに入れっぱなしになっていた自分のパスポートを玲二は差し出し、
「これがあるかないかがそんなに重要なのか?」
「そう、それがあなたがあなたである証(あかし)。私にはないもの」
自分のアイデンティティを証明するパスポートが、実はアインとの間に立ちはだかる壁とわかると、玲二はそのパスポートを破り始めます。
この行為にさすがのアインも声を荒げます。
「何をするの玲二!」
こんなもの、羊のエサにくれてやる(ちょっと強がり(笑))ちょっと、パスポートの再発行手数料意外に高いのよ(……はい?(笑))
その声を無視して細かくちぎったパスポートを車の窓から外に放り出します。
「あなた、自分が何をしたかわかってるの?あれはあなたの……」
そのアインの声を遮る様に玲二は、
「ただの紙切れだ。僕を僕でいさせてくれるのは過去の記憶だけ。そして、それは君にも……。前に話してくれたじゃないか、夢の話。色の記憶。眩しいくらいの明るさと強い風。故郷の記憶だろ?」
でもね、私はそれを知るのが怖いの「曖昧な記憶よ。故郷だという保証もない」
「でも、君の記憶だ。君にもちゃんと過去がある。『アイン』なんて言う数字じゃない。本当の名前が……」
アインはここに来てたぶん違和感を感じていたと思います。
人は自分を自分でいさせてくれる過去の記憶を得ると、ここまで芯の通った強さをもてるのか。
玲二の変化に彼女は戸惑っていると思います。
でも、それだけではないんですね。
玲二はスタートラインの違いこそあれ、自分と同じ立場にいて、同じ苦しみを味わうアインを助けたいと思う情の通った気持ちを持っている。
それは記憶を取り戻す戻さない以前の玲二の優しい想いなんですね。
アインはそれをまだ理解できない。
「なぜ、なぜ私に構うの?あなたには何の得も……」
この後、アインはこっそり玲二の名前の部分を取ります。「君を死なせたくない。見殺しにしたくない。誰のためでもない。これは僕自身の意志だ。それを貫く。それが僕の自分である事の証だ。判子と紙切れで裏付けて貰う必要なんて、ない」
自分の存在を決めるのは自分自身の意志である。
寄る辺を得てそれにしがみつくものではない。
玲二は断言します。
しかし、アインはまだこのことを理解していなかった。
アインはこの2年間、蓄積され続けてきたサイスへの依存度は、玲二の想像を超えるものでした。

深夜の道路で検問がしかれていました。
インフェルノの力が及んでいるのかは分かりません。
「免許証を」
警察官は決まり文句を言って玲二の差し出した偽造免許証を受け取ります。
「どこから来た?」
「ロスから、友人を訪ねて」
「ウォレス=楊、20歳。年齢より若く見えるな」
「よく言われます」
今は羊の皮を被っている玲二アインもすかさず良い演技をします。
「隣は?」
「妹です」
「顔色が悪いんじゃないか?」
出血の影響がまだ残るアインでしたが、警官への愛想笑いで玲二の演技を助けます。
「ええ、長旅で。車酔いです」
「OK、行っていい」
さしたる問題もなく玲二は検問を抜ける事が出来ました。
「上手くなったわね」
「ん、さっきの演技?何言ってるんだ。君に教わったんじゃないか」
精神的に安定してきた玲二に対し、情緒不安定が進むアイン
自分と拮抗する殺しの技を有し、それを補完するテクニックも申し分なし。
今はもう既に玲二はツヴァイとして教えていた頃の人物ではない。
むしろ、今は芯の通った自分よりも強い存在となっている。
自分は必要ない。
アインは自分の半身とも言えた玲二の自分を越えた大きな変化に拠り所のない孤独感を増していきます。

行くあてはあるの?玲二は通り道にあったモーテルで一泊する事にします。
「これからどうするつもり?」
アインは玲二に問います。
玲二は部屋の保安状況を確認しながら答えます。
「移動を続けながらこうやって君を休息させる。そして、君の傷が治ったら遠くへ行く」
「遠く?どこ?」
「最後まで」
あなたはそこまでする必要ないのに……自分で決めた事をやるってのは気分いいものだよ。
つまり、死ぬまで付き合うという事です。
この答えにはアインも驚きを隠せません。
「そんなこと……」
しかし、言葉の重みの割には玲二はすがすがしい顔で答えます。
「言っただろ?自分の意志で決めたって」
アインは戸惑うばかりです。
彼女には自分のアイデンティティを固定するものがないからです。
今まで味わった事がなかった状況にただ、戸惑うばかりです。
玲二の思いやりでさえすら理解できないのですから。
「何か食べ物を買ってくるよ」
アインは一人部屋に残されて今の状況に、今の自分に思いを巡らせる事になります。

この短い間にアインは自分を追い詰めます。玲二は近くのファーストフードで今夜の夕食を買ってきますが、部屋には鍵がかかっていました。
ドアにノックしても反応がない。
「アイン、アイン!……!」
何かが起こった。
ドアを蹴破り、中の様子を見ると照明が消えていました。
そして、奥のバスルームの照明だけが付いていました。
その中で身じろぎもせずに自分のこめかみにUSPを押しつけているアインの姿がありました。
死にたい、けど撃てない……玲二はそっと静かにアインの側に近づきます。
見るとアインはUSPのトリガーに指を合わせているものの、その指先は逡巡を続けていました。
玲二は優しく、ゆっくりとした動作でアインから銃を取り上げます。手違いがない様に撃鉄に指を挟みながら。
「昨日まで恐怖を感じなかったのに……ダメ、指が動かない。玲二、あなたが撃って。私を楽にして」
「勝手すぎるだろ、どうしたんだアイン?」
死なせたくないと思った人から殺して欲しいと言われるのは玲二としては我慢ならない話と思います。
私は本当は弱い人間だったのよ。しかし、アインもまた苦しんでいるのです。
「君は僕よりもずっと強い人間だったじゃないか。」
「そんな事ない。私はただマスターのために、そのためだけに。例え組織を敵に回そうとマスターの指示さえあれば……なのに、今の私は何のために生きているの?組織に追われて、ただ逃げて、引き金も引けない」
玲二はただ、黙ってアインの『告白』を聞いていました。
「昨日、あそこで死んでいれば少なくともアインのままで死ねたのに……」
「そんな……僕たちは死ぬために戦って来たのか?」
玲二はアインに良く話を聞いて貰うために彼女の側に寄り、目線の高さを合わせます。
「違う生きるために戦ったきたんだ。死んで欲しくないんだ。こんなバカな事で」
僕らの距離って、いつの間にこんなに近くになったのかな私、わからない。どうすればいいの?
君に生きていて欲しい。どうすればいい?そんな問いかけが聞こえてくる様なアインの切実な瞳に玲二は更に言葉を紡ぎます。
「生きてて欲しいんだ。ただ、それだけの事なのに」
玲二の切なる願いです。
「私はインフェルノに追われている。もし、今ここに追っ手が来たら、あなたは組織と私、どっちに銃を向ける?」
「決まってる。組織を撃つ。僕は、僕の意志で引き金を引く」
「どうして、あなたはそうまでして生き抜くの?そういう生き方を私にもしろって言うの?」
なぜあなたは私を選んでくれるの?そんな生き方、私には辛すぎる。
「嫌なのか?」
「だって、私もう誰でもない。何もない。生きている理由も役目も」
「アイン……!」
ここで玲二は一つの考えにたどり着きます。
「『アイン』は止めよう。『アイン』なんてただの数字だ。名前じゃない。君には新しい名前が必要だ」
アイデンティティを自分に固定させるための、名前です。
「名前?」
「Phantomでも数字でもない。君は君として生きていくための、名前……『エレン』、『エレン』だ。今から僕は、君をエレンと呼ぶよ」
「どうしてエレンなの?」
エレン、君が生きるための名前だよ。ちょっと、くすぐったい感じがするね。
「理由なんていい。僕がそう決めた。殺し屋でも人形でもなく、君が君として生きていくための名前」
「エレン、なんか、変」
エレンは居心地の悪そうな、でもまんざらでもない表情を見せていました(※ここから以後、彼女の事はエレンと書きます)
「そうか。エレン探そう。君の無くした過去を」
新たな名前を得たエレンは思わぬ展開に戸惑いを隠せませんでした。
彼女は後から名前というものの価値を感じる様になります。
僕は過去を得た、次は君の番だ。君の生きる目的を見つけてあげるよ。
名前は祈りを込めたものであり、望まれて生きるためのものなのです。
エレンという名前は玲二がエレンに対してこの世で生きていて欲しいと願いが込められているのです。
そして、エレンもまた、その願いを受け、生き延びる道を選びます。
『本当の名前を見つけたら、生きる理由なんていくらでも見つけられる。例え誰かを傷つけても、自分で生きようと思う。今はまだ辛いかもしれないけど、行こう、僕と一緒に』
同じ頃、夜の道を走るピックアップトラックがいました。
運転しているのはリズィ。助手席に座るのはクロウディアでした。
リズィは安全運転ですね(笑)リズィの運転って刺激が足らないのよね(苦笑)
「アンタのお気に入り、もしこのままサイスの側に付いたら、どうする?」
「殺して」
クロウディアの答えは至ってシンプルなものでした。
翌朝、玲二とエレンはソルトレイクシティに着いていました。
「車と現金を調達してくる。1時間で戻るよ。傷は?」
「無理をしなければ大丈夫」
エレンの様子を見て玲二は車から降りようとしますが、最後に、声をかけます。
気をつけて、エレン。ええ、玲二。
「気をつけて、エレン」
「ええ、玲二」
かつてはお互いの事をアイン、ツヴァイと呼び合っていた二人は、今やお互いのパーソナルネームを違和感無しに呼び合っていました。
玲二が車から降りた後、アインは密かに隠し持っていた紙切れをポケットから取り出します。
『吾妻玲二』と書かれたパスポートの切れ端。
エレンは思い出の品を取り出します。それは玲二のパスポートの切れ端。
私はこれで普通の女の子になれるのかな?「エレン、玲二が付けてくれた名前。この名前で私は……」
言葉が続けば『新しく生きる』って続けていたと思います。
しかし、それは泡沫の夢となります。
エレンは車の外に自分を監視する男を見つけます。
直感でインフェルノ一派である事を看破します。
またその男は寄ってきた車に何かしら報告をしていました。
このままこの車にいては危ない。
また、危機が迫ってきている事を玲二に知らせなければならない。
アインは自ら囮となって側の店に入ります。
店の裏口から出たアインを男は追います。
しかし、アインはその裏をかき、男の背後につきます。
この男、インフェルノの一員でした。以前と比べてエレンは弱くなっています。
男をうとうとしたその時、エレンは傷が疼き引き金が引けなくなります。
銃声一発。
倒れたのは男の方でした。
「らしくないな、アイン。痛みなど精神力で克服したまえ」
アインを助けたのはサイスとサイスの雇ったボディーガードでした。
「マスター……」
サイスはインフェルノを追ってエレンを見つけたのです。私はアイン?それともエレン?
エレンは思わず銃を落としてしまいます。
アインとしてのサイスへの忠誠と、身をもって助けてくれた玲二との狭間でエレンは深く思い悩む事になります。

玲二はエレンがサイスの手に落ちた事も知らず、車を盗もうとしていました。
しかし、その頭にリズィのロングバレルが押しつけられます。
「終着だよツヴァイ。青臭いハネムーンは楽しかったかい?」
「リズィ」
玲二は車に押しつけられます。
銃の感触は嫌だよ。リズィは実は人の良い姉御肌の人物です。
「サイスに踊らされたようね」
「僕はサイスとは関係ない」
「どうだか」
「それもゆっくり聞かせて貰うわ。さっき知らせが入った。Phantomを尾行させていた部下が殺された。Phantomはサイスの手に戻ったわ」
「嘘だ……エレン」

玲二はインフェルノに連れ戻され、尋問にかけられていました。
リズィの容赦ない拳と蹴りが玲二に繰り出されます。
「いい加減に吐いちまったらどうだい。サイスはどこに向かった」
「知らない、僕らは」
実はこれでもリズィは手加減していたのです。更に見舞われるリズィの拳。
ここでクロウディアが助け船の様に声をかけます。
「やはり、彼は何も知らないようね。後は私にまかせて、下がっていいわ」
「その頑固さだけは認めてやるよ」
リズィはそう一言残して部屋から出て行きました。
「マイクは切ってある。何を話してもいいわよ」
エレンを失い、自分の命もあとわずかだろうと思っていた玲二は、特に語る事もありませんでした。
「アインを助けて二人で逃げる。それが君の選択だったの?バカね、君は裏切り者に荷担してしまった。疑惑の対象よ。日本に戻るところではなくなった」
この男を動かすのは簡単だわ。クロウディアは玲二の側により、怪しくささやきます。
「でも、君にはまだ最良の選択肢が残っているわ。身の潔白を証明し、アインを取り返す方法が……」
その言葉にようやく玲二は反応します。
「なん、ですか?」
クロウディアは玲二の前に銃を差し出します。
「あなたなら分かるでしょ?これの使い方」
玲二はそれを両手でしっかり受け取ります。
そして、クロウディアの意志を読み取ります。
「サイスは、僕が殺します」

僕は僕の意志でサイスを殺します。

今回も良い回だったのですが、原作ファンとしてはちょっと物足りなかった感が否めません。
原作ゲームではエレンの自殺未遂の際、彼女は自分の感情を爆発させるんですね。
そして、名前を与えられ自分というものを得たとき、彼女は涙を流してその夜は眠るんですね。
アニメ版としては全体的にしっぽりと表現されていましたね。
しかし、シリーズ構成の黒田さんはあえてエレンの感情を爆発させなかった。
それはおそらく、3部のあそこで……ってみなまで言ったら興ざめですので(ネタバレ野郎の言葉じゃないですね(苦笑))ここでは伏せておきましょう。
色気はあんましないアインの下着姿そういえばそういうシーンじゃないけど、アインの下着姿が出てきましたね。
黒を基調としたものでしたが、下はスパッツでしたね(ちなみにこの設定画は公式サイトで発表されていました)
で、ブラは黒一色ではなくデザインのしっかり入ったものでしたね。
これはアインの趣味なのか、それともサイスの買い与えたものなのか。
雰囲気的にはサイスの趣味っぽいものを感じるんですけどね(苦笑)

2009年5月31日

●Phantom - Requiem for the Phantom - 第8話 「急変」 レビュー

行こう、アイン。一緒に……

このレビューはネタバレです。ご注意ください。

何かが動き出した。
物語とアインとツヴァイの関係がある意味安定してきたところで怒濤の急展開が待受けます。
しかし、ここに至るまでのそれぞれの確執、そして存在の重さはしっかり描かれているんですね。
Phantomのシリーズ構成の確かさを感じます。

自分が運命の転換期にいる事を知らないツヴァイ不可思議な命令のダブルブッキングのため、アインはサイス=マスターの命令で支援任務に。
ツヴァイはリズィの代理でクロウディアの自宅警護に向かいます。
ツヴァイはクロウディアに向かって言います。
「護衛の任を解いてください。ミズ・マッキェネン。大事な用があるんです」
アインは一人で襲撃チームの支援をしている。あまりにも危険すぎる状況です。
これは過去へのパスポートよ焦る気持ちのままツヴァイは任務解除をクロウディアに願い出ますが、クロウディアは見透かした様に意外な事を言います(もっとも、この騒動の張本人だったルするのですが)
「それ以上に大事な用があると言ったら?」
そして、ある物を手にします。ツヴァイは驚愕します。
それは日本国発行のパスポート。
「そう、これは君のパスポート。本当の君が、過去が、ここにある」
しかし、パスポートを持つクロウディアの瞳は怪しげな色に光っていました。

この作品は車関連の描写が素晴らしい。同じ頃、アインは目的地に向かって車を走らせていました。
車の中でアインは隠れ家から出るときのツヴァイとのやりとりを思い出していました。
『アイン、気をつけて』
現実の中で命のやりとりをする二人に気休めはいらない。
でも、二人は互いの無事を祈る言葉を口にします。
それがさり気なく出来てしまった。
二人はそれぞれが思う以上に互いを重い存在と受け止めていると思います。
そして、自分たちが大きく運命を狂わされてしまう事を。
『知らなかった』
『分かるわけがない』
『これから起こる運命も』
『未来なんて…』
その運命は、二人にとっては過酷なものとなります。

ツヴァイは凄腕の暗殺者でも、精神の器は10代の少年でしかない。クロウディアはツヴァイにとって決定的な精神的ダメージを与えるパスポートで彼をなぶります。
「見ていいのよ。過去を取り戻すのが怖い?」
「僕はこれまで、組織に命じられるまま人を殺してきた……」
自分を知れば罪の意識にさいなまれるかもしれない。
未知の恐怖感がツヴァイを包みます。
若い男を落とすのは簡単しかし、そんなツヴァイの動揺を見て取り、クロウディアは自分の側に引き込むべく言葉と抱擁で怪しく彼を誘います。
「だからこそ取り戻して欲しいの。本当の自分を。自らの意志で」
「意志……」
暗殺マシーンとして機械的に暗殺任務をこなしてきたツヴァイに「意志」と言う言葉は甘美なものに感じました。

私はただ、仕事をこなすだけアインは既に襲撃チームの支援準備を整えていました。
「距離249ヤード。南から断続的な強風」
後は襲撃チームの作戦開始を待つだけでした。
ツヴァイは恐る恐る自分のパスポートを受け取っていました。
「本当の自分に戻って、その上で受け入れるのよ。ツヴァイとしての自分を」
しかし、ツヴァイはここに来て怒りを感じます。
「勝手な事を、記憶を奪ったのはあなたたちだ。この手を血に染めさせたのもあなたたちだ。それを今度は……」
本当の事をいうとね『信頼』と言う言葉はこの世に存在しないのよ。クロウディアはツヴァイに体を密着させ、語りながら怪しく指を這わせてツヴァイを「落とし」にかかります。
「変革よ。組織は近々生まれ変わるの。その時に、ツヴァイ、君が欲しい。でも、どんなに実力があろうと、ただ命令に従うだけのお人形さんはいらないわ。私が欲しいのは同志。信頼できる部下。自らの意志で私についてきてくれる者」
「過去を知ったら、僕は僕でいられる自信が……」
その指先一つで軽く人を殺せるツヴァイも、今はクロウディアに為す術もなくその心をいい様に揺さぶられていました。

一方待機しているアインはそのスコープから意外な人物を見つけます。
同じインフェルノに属しているリズィです。
彼女はインフェルノが仕切っているコカイン取引の立ち会いに来ていたのです。
つまり、アインと彼女が支援する襲撃チームはインフェルノを攻撃する事になるのです。
リズィを捕捉でも、関係ない。ターゲットは敵。
しかし、彼女の価値観は違っていました。
「任務は襲撃のバックアップ。今いる人たちがターゲット」
アインが作戦を確認した直後、襲撃チームが一斉にコカイン取引現場を襲撃します。
「積み荷が!」
リズィは急ぎ積み荷を守ろうとしますがそれをアインのスナイパーライフルが阻止します。
積み荷を乗せたトラックが奪われます。
そのトラックの運転席には梧桐組の若頭 梧桐 大輔とその舎弟の志賀が乗っていました。
リズィは自分がクロウディアに裏切られている事をまだ知らないありゃ、お二人さん襲撃チームにいたんですね。
「やったぜ!」
「まだ早いですよ兄貴」
「いいから飛ばせ!」
マズルフラッシュやライフルの反動の描写が地味だけど良い感じのカット梧桐組に恩を売り、彼らを後ろ盾にインフェルノにおける自分の地位を向上。合わせて潜在的な敵であったサイス=マスターと、その「武器」であるアインの抹殺。
ツヴァイを状況的袋小路に追い込み自分の側に引き込む。
クロウディアの考えた筋書き通りに事は進んでいました。
アインは単身残り、襲撃チームの脱出を支援していました。
「私らを釘付けにするために、度胸あるじゃない」
リズィは身動きの取れない状況を打破すべくまずスナイパーから片付ける事にします。

そんなリズィ達とアインとの激しい戦いを演じているとき、ツヴァイは絶望的な精神状態に陥っていました。
パスポートを開く事に躊躇するツヴァイの目の前で、そのパスポートをクロウディアは開きます。
その中に安寧な表情の自分(写真)がいました。
その脇にある名前は『吾妻 玲二』でした。
何も知らなかった頃の自分体に染みついている間違いない自分の筆跡
「名前を口にして」
クロウディアの誘いのままにツヴァイは、
「吾妻玲二……」
サイス=マスターが薬物による洗脳で封印していたツヴァイの過去の記憶が巨大な本流となって彼の中に流れ込んできます。
そして、アインとの出会いも思い出します。
全てを、思い出した。「そうだ、僕は、旅行先で、そして……」
アインに捕まり、暗殺者の教育を受け、そして人を殺した。
欠け落ちていた記憶が全て埋まり、吾妻玲二は残酷な形で自分を取り戻します(一応便宜上、意味的な事も含めて彼の事をツヴァイと書き続けます)
ツヴァイは平和な一般人、吾妻玲二として今までの業の深い罪を受け、感じ、力なくその場で跪きます。
自我崩壊瀬戸際のツヴァイ「何人も、何人もこの手で……僕はただ、生きたくて、忘れたままでよかったのに……」
「言ったでしょ。ただの人形はいらないって。覚めるのよ、夢から。君は君に戻る。過去も罪も全てを受け入れ、そして向き合うのよ。自らの意志と……吾妻玲二」
サイス=マスターは薬物による洗脳で人を操りますが、クロウディアは人の心の弱い部分を突き、その心の隙間を狙って人を操ります。
二人ともろくな死に方をしない所行です。

リズィは遮蔽物として列車を盾にして距離を詰めていました。
そして彼女は初めて知ります。
自分の戦っている相手を、
「Phantom!?サイスの野郎!」
任務終了。今から撤収に入る。Phantomが相手とはね。
実はこの件に関して言えばサイス=マスターはクロウディアの罠にはまっていたわけですが、リズィ自身はサイス=マスターをかなり嫌ってましたから、この状況、リズィ視点でもかなりハマって見える状況だったんですね。
しかし、悲しいかな親友と思っていたクロウディアにリズィは裏切られていたわけなんですよね。
利害と裏切りが交錯する世界に真の友人はあり得ないのです。

やがてあなたは私に服従するわ。クロウディアのツヴァイへの怪しげな誘いの言葉は続いていました。
「どうしろと、僕に……」
「私に付いてくるのよ、玲二。君自身の意志で。ここには君の力を必要としている者がいる。君の居場所はここにある。その手を更に血に染めて、重い罪を私と共有してくれるなら君に素晴らしい現実を与えると約束するわ」
ツヴァイは虚ろな目でクロウディアの甘いささやきを聞いていました。
「ただし、これは強制じゃない。君はもう一つの選択をすることも出来る」
「もう一つ……」
ツヴァイはクロウディアに精神を翻弄されています。さぁ、来なさい。私のもとへ。
クロウディアはそれが出来ない事と知っておきながらあたかもツヴァイの自由選択を尊重する口ぶりで話します。
クロウディアは確信していました。
思い悩む事はあっても、かならずツヴァイは自分の手に落ちると。

その頃アインは作戦終了と判断。
撤収にかかりますが追っ手に阻まれ反撃しながら逃げていました。
マズルフラッシュの中のなんだか可愛いアイン。リズィの姉さんの銃は大口径のロングノズル
日本に帰してくれる。それはあり得ない……あなたを日本に帰すなんて嘘ぴょん(笑)
「!……日本に、帰る」
「君が自らの意志でそう望むのなら特別に計らうわ。君は疑うかもしれないけれど、私は本気よ。本当に帰してあげる、故郷に。私が欲しいのは、あくまで意志を持った部下だから」

一方リズィはアインを倉庫内に追い詰めていました。
以前なら相手の言葉に反応するアインではなかった。「サイスの命令だろうが『人形』もそこまでにしとけ。逃げられやしねぇぞ。よく考えろ。あの蛇野郎はどうせお前を捨て駒の様に使っているだけさ」
以前のアインなら、こんな言葉に惑わされる事はなかった。
ツヴァイと共に過ごす中で彼女の中にも揺らぎが生じていたのです。
それが彼女の反応を鈍らせる事にあります。
リズィも手練れのガンマンなのです。
アインはリズィの銃撃を受けてしまいます。

僕はどうすればいい。どこに行けばいい。ツヴァイはクロウディアの屋敷を出て、あてもなく車を流していました。
考える時間が欲しかったのです。
自分の選ぶ道を。
「日本に……戻る」
『君にとっては大きな選択よ。時間をあげるわ。一人で考えて』
クロウディアから与えられた時間はツヴァイにとっては辛い苦悩の時間でした。
やがてツヴァイは街中で公衆電話を見つけます。
家に、電話を……それに押し慣れた番号を押します。
自分の、自宅の番号です。
『はい、吾妻です』
母親でしょうか、女性が電話に出ました。
懐かしい声にツヴァイは激しく動揺します。
一言何か言えば状況は変わっていたかもしれない。
助けを求めればパスポートを持っている今、国家が自分を守ってくれる。
『もしもし?もしもし?……』
故郷は、あまりにも遠すぎる。ツヴァイは最後までその声に応える事が出来ませんでした。
「戻れるわけが、ない……」
自分はあまりにも人を殺しすぎた。あまりにも罪が深すぎる。
平和な日本の、自分の家に帰れない。
自分は変わりすぎた。
その平和な世界に、馴染む事なで出来るはずがない。
ツヴァイはただ、涙するしかありませんでした。

始末は付けなきゃね。「捜せ!」
アインはリズィからの一撃を受けていたものの、その場から逃げおおせていました。
ツヴァイは考えをまとめるために全ての始まりの場所に行きました。
自分が普通の人間から暗殺者に生まれ変わった場所。
あの廃工場でした。
寝泊まりしていた部屋に入ると、そこはおびただしい血が流れていました。
反射的に銃を構えるツヴァイ。
人の気配が……なぜかアインがそこに……
しかし、彼がそこで見たのは銃撃を受け、出血のために息も絶え絶えのアインでした。
「アイン、どうして?」
「私を殺しに来たの?」
「どういう事だ?」
疑問に疑問がぶつけられる。
さすがにアインも大量の出血には勝てなかった。今ひとつ状況が飲み込めていないツヴァイ。
アインはツヴァイの自分に向けられる戸惑いの表情を見て取ります。
ここまで来ても状況を冷静に分析できるアインは悟ります。
「何も知らないの?なら、早く組織に戻りなさい。あなた一人なら、まだ……」
アインはそこまで言って意識を失い、倒れます。

苦しむアイン。ツヴァイはアインをベッドに寝かせます。
アインは腰に一発受け、その弾丸はまだ体の中に残っていました。
苦しそうにあえぐアイン。
「アイン……」
その時、ツヴァイの携帯が鳴ります。
「僕です」
「急変よ。サイスが組織を裏切った。Phantomを使い、インフェルノの積み荷を襲撃して。サイスは早々に雲隠れしたわ。Phantomも同じく逃走。ただPhantomはリズィの銃弾を受けて。組織は今全力を挙げて二人を捜索中よ。どちらもまだ見つかってないわ」
アインは僕の側で、死にかけている
その表情、まさに悪女の感のクロウディアこの時初めてツヴァイは自分が最悪の状況に置かれている事を知ります。
リズィに撃ち込まれた弾丸に苦しむアインの側で。
「君にも裏切りの疑いが出てるけど、私ならどこにいたのかを証明できる。考えてる時間はなくなったわ。すぐに決断して。私の元へ来るか。それとも……」
ツヴァイに決断を迫るクロウディアの口元はゆがんだ形で笑みを作っていました。
「ただこれだけは言っておくわ。サイスとファントムは私たちの敵よ。『向こう側』に付くのなら、組織はあなたを……」
ツヴァイはまさに袋小路に追い込まれていました。

アインの容態に狼狽えるツヴァイ絶望的な状況でしたが、ツヴァイにとっては死にかけているアインを助ける事を最優先にしました。
「血が止まらない。弾が抜けていないんだ。どこか医者に、あぁダメだ。おそらくどこの病院も組織の手が……」
ツヴァイはかなりの人間を殺してきましたが、その本質は優しい少年です。
死にかけている自分の半身とも言うべきアインを、組織の論理だけで見捨てる事は出来なかったのです。
苦痛にあえぐアインを見てツヴァイは決断します。
「やるしかない」
ナイフを消毒。着衣を脱がせる(状況によっては衣類を患部を中心に切り開く場合もあります)
今は、やるしかない今は、アインの精神力だけが頼り。
ツヴァイはアインを中から苦しめている弾丸の自ら摘出するべく準備します。
ナイフをランプの火で熱します(消毒の意味)
麻酔無しの弾丸摘出。アインにとってかなりの苦痛を伴います。
ツヴァイのささやかな気遣いで苦痛を少しでも和らげるようにとアインの口にハンカチをくわえさせます。
知識としては知っていても、初めての弾丸摘出にツヴァイは緊張します。
銃創を切り広げ、その中に指をもぐり込ませる。
ツヴァイがアインの腰の中にもぐり込んだ弾丸を探すうちにアインは苦痛に耐えきれず悲鳴を上げます。
苦痛の中でもアインは涙を流さない。腕に伝わるアインの苦痛。
アインの悲鳴に心を痛めながらもツヴァイは処置を続けます。
事ここにいたってツヴァイ自身の躊躇する心がこの処置の最大の障害となります。
そして、処置はなんとか成功裡に終わります。

このアインを抱きしめている行為が、ツヴァイの決断を促す。ミネラルウォーターを飲み、一息つくツヴァイ。
やっと苦痛から解放され、アインは静かに眠っていました。
「頑張ってくれ、アイン」
ツヴァイは出血に伴い、冷え切ったアインを毛布でくるみ、自分の人肌で暖めます。
ツヴァイのアインを助けようとするこの行為は恋愛感情から発したものではなく、彼女の死が自分の死と等価である感覚を彼は感じていたのです。
「死なないでくれ、アイン」
ツヴァイはアインの包囲網が狭まってきている事は承知していましたが、彼は処置直後では危険と考え、その場から動こうとはしませんでした。
事実、インフェルノは総力を挙げてPhantom=アインを探していました。
今作品最強の悪役に上り詰めたクロウディア。まだアインを見つけられない捜索チームの不首尾にリズィは苛立っていました。
そして現在目下行方不明扱いのツヴァイの裏切りの可能性を考えたリズィにクロウディアは事も無げに言います。
「その時はリズィ、あなたは彼を始末して」
クロウディアの価値観は二つしかありません。
『利用できるか出来ないか』
こんな生き方をしている人間は、まともな死に方を迎える事はないでしょう。

探索包囲網が縮められていると感じながらも、アインのためのその場から離れられないツヴァイは、彼女の冷たい肌を感じながら図らずも考える時間を得ていました。
ツヴァイは寝息を立てるアインに語りかけます。

アインにこんな風に話しかけるのって今まで無かったね。「アイン、実はさアイン。今夜ミズ・マッキェネンにパスポートを渡されたんだ。僕のパスポート。それで何もかも思い出した。生まれ故郷の事。家族の事。僕には帰る場所があったんだ。名前も思い出したよ。僕の名前は玲二、『吾妻 玲二』ツヴァイなんて味気ない名前より随分マシだろ?でも何でだろ……あんまり嬉しくないんだ」
何も知らず平和に暮らしていた頃から隔絶してしまった今の自分。
「もぅ、あの頃の僕じゃない。あそこに帰っちゃいけない人間なんだ」
そして、ツヴァイは現実の、今これからの事に考えは進みます。
「組織に戻るしかないのか。アイン、僕と組織に……」
今は安らかなアインの寝顔アインを連れて組織に戻る事を考えるツヴァイでしたが、先の電話でクロウディアは明確にアインをサイス=マスターとつながった敵と見なし、それに組みすればツヴァイさえも殺す対象になると明確に答えていました。
「ダメだ。アインは……」
組織に戻ればアインは確実に殺される。
「なら、アインを残して……僕だけ戻る」
追い詰められた者の心理です。
アインを残してでも生き延びたいというツヴァイの心に隙間に入ってくるものがありました。
それはこれまでのアインと過ごした思い出と言ってもいい記憶。
生き延びる術を徹底的にたたき込んでくれたアイン。
そして、偽りでもショッピングモールで見せたあの女の子らしさと眩しい笑顔。
彼女のおかげで僕は生き延びている。これが本当のアインじゃ……
アインも少しずつ変わっていった。アインの心の奥底にある風景。
あのとき一緒に行ければ……「あなたもね」アインは変わった。
共に暮らしているうちに少しずつ変わってきた彼女。
彼女の内側に触れたかもしれない故郷の記憶と思われるアインの夢。
「アイン、気をつけて」
「あなたもね」
そして、二人の運命が大きく変わってしまった今夜の別れ際、気休めの言葉が出るくらいに変化していた二人の距離。

僕はこんな野良犬の様な生き方は認めない。「僕たちは名前もなく、『数字』だけを与えられて、ただコマの様に使われ、捨てられて……冗談じゃない、冗談じゃない。こんな意味のない生き方なんて……」
自分の強いられている不条理な生き方にむなしさを感じているとき、ふとツヴァイの手を触れるものがありました。
まだ、意識がもうろうとしているアインの手でした。
「!……」
アインの目はまだ焦点を結んでおらず、無意識の反応でした。
まだ、体の内側から来る苦痛にアインは耐えている様でした。
「アイン?」
君を助けられるのは僕だけだ。アインは朦朧としていましたが、耳から入る情報は覚えていたのです。
ツヴァイにとって確かな事は今抱きしめているアインは生きている。そして、彼女を助けられるのは自分しかいないという事。
「アイン、今君を守れるのは僕だけだ。見捨てない。絶対君を組織に渡したりしない。逃げよう、二人で。この街から、インフェルノから」
ツヴァイは少し休んだ後、アインを着替えさせ、彼女を車に乗せました。
痛みの影響かアインは少し苦悶の表情となっていました。

人は守るべき人を得たとき、強くなれる。

しかし、彼女は生きている。
そして、助けなければならない。
絶望的な状況でツヴァイを強くしているのは無力な存在となったアインだったのです。
「行こう、アイン。一緒に」
ツヴァイは一直線に延びた道路を走ります。
絶望的な状況での、逃避行でした。

あてのない、逃避行の始まり

急転直下の展開でしたね。
ツヴァイの想い、そして決断。
しっかりと描かれています。
今まで時間をかけてアインと過ごした時間を、そしてそれぞれの心理も丁寧に描き、ここに至るまでの展開を一切のぶれなく描いている。
所詮人間は感情の動物で、ツヴァイがアインを抱きしめながら考えを巡らせていて、彼女の肌から伝わるわずかな温もりがツヴァイの感情を揺り動かします。

そして、この手はまた離れる事になる……

そして、何より自分をこんな不条理な状況に追い込んだ事への恨みもあります。
生き延びるための打算より、感情が勝った事を、このPhantomでは丁寧に描いてくれた。
これは嬉しいですね。
しかし、アインはまだアインですし、ツヴァイはままならない運命に翻弄されます。
Phantomはまだ、私たちを楽しませてくれますね。

●Phantom - Requiem for the Phantom - 第7話 「過去」 レビュー

私だって、本当は故郷が欲しい。故郷が知りたい……

このレビューはネタバレ全開です。ご注意ください。

このTV版Phantomは黒歴史であるOVA版と違い、かなり原作ゲームに敬意を払ってそのストーリーを追っています(違うメディアなので表現は違う箇所もありますが)
実は公式サイトに10話までの簡単なストーリーも載っています。
そこで確認できたのが、3部構成であるPhantomの第1部は10話までであり、そこに至るまでの急変は実は今回7話からスタートします。
別離と邂逅を繰り返すPhantom二人の物語の『最初の終わり』が始まります。

どうやらインフェルノの息のかかったレストランなのか、店内はクロウディアとサイス=マスター二人っきりのディナーです。
話題はクロウディアからサイス=マスター個人的な作戦の依頼。
「私の個人的な点数稼ぎだ」
それはクロウディアの個人的な組織内でのポイント稼ぎのため。
「予期せぬ功績を挙げて上への貸しにするわけですな」
美人と食事をするのは楽しい。蛇男と食事をするのは虚しい(笑)
暗躍する事が元々得意なサイス=マスターはクロウディアが分をわきまえた依頼と考え、依頼を受けます(上司からの依頼ですので断る理由もありませんが)
そのため、サイス=マスターはインフェルノ組織内にも分からぬ形で極秘にPhantomを動かす事にします。
今や上司であるクロウディアをも凌ぐ存在となったサイス=マスターへの、クロウディアの静かな一手でした。

アインって他の私服はないのかなぁ翌朝、朝食の準備をしていたアインとツヴァイの隠れ家に一本の電話が入ります。
「誰?」
「パートタイムのシフトチェンジ。今から来れないかって」
サイス=マスターからのものでした。呼び出しはアインだけ。
「送っていく、今日は運転の練習に出るつもりだったし」
「必要ないわ」
「一緒に住んでいるカップルなら、それくらいするだろ?」
「そうね」
ウェルダンが好みならそのままにしとけば?(笑)アインを説得するには仕事の延長線上で語れば良く、ツヴァイもなかなか分かって来ているようです。
その時、西海岸における中国系マフィアと日系マフィアの抗争がTVで報じられます。
「気をつけて」
「大丈夫。巻き込まれ様なヘマはしないよ」
アインの指摘は別でした。アインの視線の先にあるものはフライパンにかけっぱなしで焦げる寸前の目玉焼きでした。
「ぼや騒ぎでここを悟られたくないわ」
「ああぁ、あぁ……」
これはこれでありな焼き加減(笑)こりゃ面目ない
このシーンはPhantomでは珍しく日常的なほほ笑ましいシーンなんですよね。
先のシーンでのアインを車で送ると言ったツヴァイの心遣い。それを理屈の上でとはいえ承諾したアイン。
アインとツヴァイの間は最初の頃の緊張感を帯びたものから幾分柔らかいものになっていますね。

アインと楽しいドライブだったのに……アインを車に乗せ、送ろうとした矢先、クロウディアが自慢のフェラーリ・F40に乗ってやって来ます。
「出かけるところ?」
「ミズ・マッキェネン!?」
「よかったら付き合わない?」
クロウディアも人が悪く、アインが車の中で待っているところを見れば公私問わず二人がこれからドライブに行くのは明白です。
「申し訳ないのですが、僕は運転の練習をしないと……」
「なら、これで(F40)ですればいいじゃない」
ツヴァイにご執心のクロウディアアイン、やっぱりそのスカートは短いと思うよ(笑)
クロウディアのツヴァイが押し切られるのを見てアインは車から降ります。
「歩いて行くわ」
このシーンって何となくアインが煮え切らない態度のツヴァイに愛想尽かして自分で行っちゃう感じなんですよね。
二人だけの、柔らかい時間に割り込んでくる女、クロウディア。
アインにとっては常にパートナーのツヴァイを前触れも無しに取り上げていくクロウディアは嫌な存在なのかもしれませんね(等のアインはツヴァイをどう考えているかというと、ちょっと謎ですが(笑))

とにかくじゃじゃ馬は乗りこなすのが難しいツヴァイはクロウディアに慣れないじゃじゃ馬のF40のハンドルを預けられ、パシフィック=コースト=ハイウェイ(PCH)を走ります。※原作準拠
「どう、この車。気に入った?どこまでも行けそうな気がするでしょ。世界の覇者にでもなった気がしない?」
「まさか、振り回されるだけですよ。こんな……」
何となく、今の二人の関係みたいなやりとりです(笑)
クロウディアは無謀なイタズラをツヴァイにします。
運転に集中しているツヴァイの太ももを軽く掴んだのです。
「!?」
命がけのイタズラ(笑)はぅ、そこ敏感なんです!(笑)
クロウディアからの思わぬセクハラに(笑)ツヴァイはハンドル操作を誤りF40は派手にスピンします。
しかし、ツヴァイは持ち前の反射神経で何とかガードレール寸前でF40を止めます。
「よく止めたわね。そう少しで全てが終わるところだったわ」
クロウディアさん、アンタのせいでしょうが!!って冷静なツッコミは置いておいて(笑)
「終わる。終わるものなんて何も無いですよ。僕が死んでも『人殺し』が少し減るくらいで……」
ツヴァイは今まで殺してきた人々を思い出していました。
最初に手をかけたウォレス、対抗マフィアの子供というだけで殺さざるを得なかったデューク。
他にも沢山、ツヴァイは、人を、殺してきました。
彼女の本意は別のところにある「ダメよ。きみは無駄に死んではダメ」
ってもう一回言うけどF40のハンドルを握っていたツヴァイを殺しかけたのはクロウディアの姉さんですぜ(笑)
「死に場所は私が決めてあげる。私の信頼を得た男には、その資格があるの。出して、走り続けるのよツヴァイ」
独善的なセリフですが、つまりクロウディアは『勝手に死ぬな』と言っているわけですね。
何かとツヴァイに目をかけ、励ましているているクロウディアですが、彼女はかつてツヴァイに自由なものの一つとして『スピード』を上げました。
しかし、彼女の生き方を見ると、私には生き急いでいるようにしか見えませんでした。

同じ頃、アインはサイス=マスターと合流し、作戦指示書の入ったCD-ROMを受け取っていました。
「予定外の任務だが、まぁパートタイムだとでも思えばいい」
「はい」
「クロウディアはツヴァイにご執心の様だが、寝取られる事など内容にな」
いえ、サイス=マスター彼はクロウディアにきっちり食われました、ってお下品な話は出ませんが(苦笑)この言葉はアインの琴線にかすかに触れます。
「例えそうなったとしても問題はありません。任務の遂行にツヴァイの存在は絶対ではありませんから」
「そうだな、元々ツヴァイとのコンビは偶然の産物でしかなかった」
「……」
アインとしての答え……そして、個人的な反応
この時アインはサイス=マスターに見えないところでこの一言に反応していました。
ツヴァイ。
もう一人の自分。
自分の手で作り上げてしまったもう一人の暗殺者の自分。
彼の暗殺者として駆け足に生きる姿に、自分を重ねてしまった。
彼を通して暗殺者ではない真の自分を見て、その苦痛に耐えられなくなるのではないかとの思い。
出会いは確かに偶然であった。
しかし、アインにとって今のツヴァイの存在はそんな言葉では片付けられない存在の重さがありました。

原作ではツヴァイはF40を楽しんで乗りこなします一方ツヴァイはF40を何とか走りこなし、クロウディアの指示でドライブインの駐車場に入りました。
「もう少し遊んでらっしゃい。1時間くらいしたら戻ってきて」
「どういう事ですか?」
「慣れておきなさい。こういうモノの扱い方に。飛ばしてらっしゃいツヴァイ」
車も女もね、ってセリフの続きが聞こえて来そうです(笑)
実はこのドライブインは目下の商談中の相手である梧桐組・若頭 梧桐大輔との会談の場所でもありました(脇に控えるのは舎弟の志賀 透)
「随分達者な車(F40)でお出ましだなぁ。いいのかい、こんなに堂々と会っちまって」
「ご心配なく。それなりに煙幕は張ってあります。だからこの場では遠慮無く話してもらって構いませんわ」
つまり、このドライブインと周辺はインフェルノ管理下にあるという事です。
血と銃弾の絡む商談この男の本質は武闘派
無論、商談と言っても堅気な話ではありません。
商談の中身はコカイン500kg(時価総額2億ドル)の奪取。
武器と情報収集等の段取りはクロウディア、兵隊は梧桐組が手配をそれぞれ担当する。
一見、優男(やさおとこ)に見えますが、志賀もヤクザです梧桐大輔の片腕である志賀は疑問を呈します。
つまり、この話、美味すぎると。
この手の交渉に長けているクロウディアは明確に取引の正当性を語ります。
クロウディアは実態が各地のマフィアの寄り合い所帯であるインフェルノの中で、どの組織にも属さない代わりに中立を保っている。
それが故に実行部隊(Phantomも含まれる)を任されている。
しかし、組織に属さない立場は非常に不安定である。
梧桐組に後ろ盾になってもらう。そのために支度金がコカイン500kgであると。
「まぁいいさ。どのみちこっちの返答は決まってるんでなぁ。乗らせてもらうぜ。あんたの話」
契約成立でした。
しかし、この会談で取り交わした事がアインとツヴァイの後の運命を大きく変える事になるとは、このとき二人はまだ知りませんでした。

アインはツヴァイの車に乗れなかった代わりに、電車で隠れ家に戻っていました。
電車の中でやる事も無しに何気なく窓を見ていました。
『元々ツヴァイとのコンビは偶然の産物でしかなかった』
思い出されるサイス=マスターの言葉。
見つめていた窓越しに、アインはツヴァイとの出会いを思い出していました。
ツヴァイとの出会いを思い起こすアイン暗殺者、アイン
アインはスラム街に逃げ込んだ記者を追っていました。
彼はインフェルノの秘密の一端を掴んでいました。
アインの任務はもちろんインフェルノの秘密を握る記者の抹殺、証拠品の回収。
彼女はマスケラを被り、暗殺者の目で記者を追っていました。
事件に巻き込まれた哀れな観光客。後のツヴァイ。その記者が観光客にディスクを渡しているところアインは見定めます。
「頼みたい事がある。これ(ディスク)を警察に渡してくれればそれでいい。頼んだぞ」
いきなり現れた記者にディスクを渡された哀れな観光客こそ、後のツヴァイでした。
ツヴァイにディスクを渡して走り去ろうとした記者は撃たれてその場に崩れます。
初めてツヴァイの前に現れるアイン。
アインはとどめに記者にもう2発撃ち込みます。
ツヴァイは慌ててその場から逃げます。
アインは冷静にその後を追いました。

廃墟となったビルの側にツヴァイの持っていたリュックが落ちていました。
アインの任務の一つがディスクの回収でしたから、アインはリュックを確かめようとします。
その時なんとツヴァイは向かいの廃ビル2階から銃を持っているアインに飛びかかります。
その際はあっさり避けられて足払いを食らってしまいます。
アインはなぜか素人の動きに手こずりますしかし、ツヴァイは奮戦します。
突き付けられた銃を払い、アインともつれた末に銃を蹴ってはじき、その隙に逃げます。
ナイフを用意したアインでしたが、ツヴァイの逃げた先を見定めて急がずその後を追いました。
素人の逃げるパターンは分かっていましたから。
しかし、ツヴァイは逃げ続けました。アインの黒い瞳に怯えながらも。
ツヴァイは飢えと闘いながら別の廃ビルに隠れていました。
「もういいだろ。お腹がすいた。もういったい何日だよ……帰りたい、日本」
力なく横たわるツヴァイ。
起きたとき、周りは静かでした。
運命を狂わされた者の涙「静かだ。今なら、ひょっとして……ダメだ。出て行ったらすぐに見つけられる。あいつに殺される」
ツヴァイは記憶を消されて覚えていませんが、最初のアインとツヴァイの出会いは、追う者と追われる者の関係だったのです。
ツヴァイは絶望の中また力なく横たわり、涙を流していました。
彼にはもうほとんど体力は残っていませんでした。

次に彼を起こしたのは銃を構える音でした。
そこにいたのはアイン。
……銃?彼女の瞳の色は、わからない
ツヴァイは絶望的に状況でも生き延びようと這ってその場から逃げようとします。
アインは冷静にまずディスクを回収します。
その場に、なぜかサイス=マスターもいました(ナレーターの代わり?(笑))
次のおもちゃめっけ(笑)「ここまでPhantomを手こずらせて、まだ生きているとは。大したものだ。恐怖や飢えさえ押し殺して彼はこの場所に留まり続ける事を選んだ。それが唯一生存できる手段だと判断し、本能によって衝動を抑え続けた」
ツヴァイは生きあがく様に出口のドアを目指して這い続けました。
そして、ドアを目の前にして気絶しました。
「面白い。面白い素材だ」
これは夢。
サイス=マスターが薬物による洗脳でかき消されたと思われていたツヴァイの記憶が、夢となって現れていたのです。
「ツヴァイ。ツヴァイ起きて」
起きれば、また長い夢の続き……ここで初弾を入れる必要はないと思うけど(笑)
ツヴァイは隠れ家のソファーで寝ているところをアインに起こされました。
「出かけるわ、用意して。任務よ。今夜決行。明るいうちに下見を済ませておくわ」
「……」
起きたばかりのツヴァイはまだ少々寝ぼけていたのか、うまくアインの言葉が飲み込めなかったようです。
意識下の夢の中で見た過去が彼をまだ捕らえていたのかもしれません。

次の任務の下見下見の場所は列車の操車場。
「今夜22時。500kgのコカインがここに運び込まれる」
「インフェルノがそれを奪う」
「私たちの任務は襲撃犯のバックアップよ」
「信用できるヤツらなのか?その襲撃犯は」
任務前の調査というときにアインはついサイス=マスターの言葉を思い出してしまいます。
『クロウディアはツヴァイにご執心の様だが、寝取られる事など内容にな』
ざらっと、砂をかむ様な嫌な感触を覚えるアイン。
人の意識を操る事が出来ても、感情まで操れなかったサイス=マスター私の感情は関係ない
しかし、自分の中に浮かび上がってきた意図しないサイス=マスターの言葉と感情は任務には関係ない。
わずかに目を細めるだけで、
「聞いてないわ。何も」
「Phantomならではの任務というわけだ」
「戻りましょう。武器を揃えないと」

廃線となった線路伝いに戻っているとき、ツヴァイはアインの背中に自分を追っていたときの彼女のイメージをダブらせてしまいます。
「!?」
意識の下にあるアインのイメージ意識下の恐怖がツヴァイを狼狽えさせる
しかし、起きている彼はそれが何のイメージなのかは分かっていませんでした。
ツヴァイのひるんだ声にアインも何事かと振り返ります。
ツヴァイは自分を捕らえて放さない夢についてアインに問います。
「アイン、君は夢を見る事ってあるかい?」
「夢?」
「見た事のない景色を見たり、知らない人間と会ったり、そういう夢は、僕の、記憶、なのかな……」
「さぁ」
以前のツヴァイならこんな質問はしなかったアインも質問に答える事はなかった
アインはさも興味がないとばかりに話を切り上げようとしますが、
「君には無いのか?そういうこと」
ツヴァイの問いに答えることなくアインは歩き始めます。
しかし、アインは以前と比べて少し変化していました。
無視してもいい他愛もないツヴァイの問いにアインは歩みを止めて、答えます。
「時々、色の夢を見る」
「色、だって?」
「そう、色。それと、風」
それは、アインの中に残るかすかな故郷の記憶広い空、高い雲、そして強い風
アインの心を垣間見るツヴァイ私も故郷を知りたい。けど、届かない
アインは自分の心の中だけにしまっていた心象風景を語り始めていました。
「青と白と緑色。それだけしかない。後は何もない場所」
アインの語る風景はツヴァイも共感していました。
「でも、眩しいくらいに明るくて、それで風が吹いてる。凄く強い風が」
アインは夢の中で繰り返していた様に強い風で舞う草をつかもうとします。
しかし、草は手の中をすり抜けて行きます。
ツヴァイ、わかりきった事をいわないで「君の故郷なのかな?その景色」
「さぁ……でも、それが何。故郷を知ってどうするの」
アインは語気を強めます。
ツヴァイよりも先にこの地獄を味わい。
アイデンティティの欠片もない自分に望郷の念は何ほどのものか。
それは否の自分にとって苦痛を与えるだけのものでしかない。
「確かめに行きたいと思わないか?記憶に残ってる、その場所」
ここにアインとツヴァイの思いのズレが出てしまいます。
「そこに、私たちの居場所なんて無い」
一言の元に切り捨てるアインにツヴァイは返す言葉が見つかりません。
しかし、アインは見えないところで悩む苦しみます。
それはほんのささやかな形で手の仕草で現れます。
自分の感情を出しても、意味はないから私は名前も安らかな居場所もない、Phantom
でも、それにツヴァイが気づくことはありませんでした。
「人殺しの居場所なんて、ここ以外、どこにもあるわけ無い。何もないのよ。夢は幻想。現実の邪魔になるだけ」
アインは現実に絶望し、その上で現実の中だけで生きている。
自分の中のささやかな思いは、生きていく事に不要なものと考える事で生き延びているのです。
アインはもうこれ以上言う事はないと戻る道を歩き始めていました。
しかし、ツヴァイの言葉はアインを少しずつ変化させているのもまた事実でした。
でも、ツヴァイからの影響は、アインを不安にさせるものでもあったのです。

アインの何気ない仕草って、結構可愛かったりするんですよねその夜、あいにくの雨となってしまいました。
隠れ家にてアインは支援火器としてライフルの手入れを、ツヴァイは窓越しに雨の街をただ眺めていました。
そこに電話が入ります。電話の相手はリズィ。
クロウディアの伝言で今夜リズィの代わりにクロウディアの元に行くようにと指示が入ります。
急の配置換えでリズィは大きな取引の立ち会い、ツヴァイはその代わりとしてクロウディアの護衛をする。
ツヴァイはサイス=マスター指示の作戦があるという事を伝えますが、リズィはクロウディアがツヴァイの上司である事を理由に命令をねじ込みます。
ただでさえ雨の中の襲撃班のバックアップは難しい。そんな任務にアイン一人行かせるわけにはいかない。
困ったツヴァイに助け船を出してくれたのは他ならぬアイン自身でした。
「行きなさいツヴァイ」
「アイン……」
「マスターからの任務は私が一人で遂行するわ」
「あなたはミズ・マッキェネンの指示に従って」
このとき既に二人は幹部二人の暗闘に巻き込まれていた私たちは自分の運命を決められないわ
「そんな、危険だ」
「大丈夫」
「一人きりだなんて……」
「それを決めるのは、私たちじゃないわ」
アインがかつて言った事が思い出されます。
『道具であること。装置であること。私たちは機能しさえすればいい』
そう、自分たちは判断できる立場ではない。
アインはそれを言っているんですね。

ツヴァイを待つクロウディアはマグワイヤと電話にて話をしていました。
「……はい、私が関与しないところで色々と動いているようです」
「サイス=マスターもバカではあるまい。故に先行して動こうとするのだろう」
マグワイヤはクロウディアの言葉を信じ、クロウディア管理下での行動をよしとし、分別を越えた段階でツヴァイごとまとめて処断する事となりました。
クロウディアはここでハッキリと今回の件、全ての黒幕として正体を出しました。
この人は寝てる以外に仕事はないのでしょうか?(笑)これでサイスの息の根が止められる……
自分の指示で梧桐組とアインにコカイン500kg(実はインフェルノ所有物)を襲わせ、その責任をすべてサイス=マスターとアインになすりつける。
梧桐組を後ろ盾としてインフェルノでの立場を強固なものとし、同時に最大のライバルであるサイス=マスターとその『武器』とも言えるアインを同時に消し去る。
防御と同時に攻撃も行う腹黒い策士であるクロウディアの策略でした。

アインとツヴァイはトニー・ストーンの家族抹殺をのぞけばほとんどアインと共に作戦を遂行していました。
そして、どんな危険な任務でも二人で共に生きて帰ってきた。
偶然でも運でもない。不断の訓練と研ぎ澄まされた感覚の結果である。
しかし、この雨の夜の任務は何かが違っていた。
何かが回り始めている。
そんな思いでしょうか、二人はらしくない行動を取ります。
「アイン、気をつけて」
「あなたもね」
アイン、気をつけて……あなたもね
そんな気休めの言葉は何の役にも立たない。
しかし、二人はいつもの現実主義と違ってそんな言葉のやりとりをごく自然としていました。
次に二人が出会うとき、お互いの立場は全く違うものとなっていたのです。

いよいよ物語が大きく動き出しますね。
日増しに深まるクロウディアとサイス=マスターの確執。
距離が縮まると言うより、欠く事の出来ないパートナーとして互いの存在の重みを感じるアインとツヴァイ。
実はこの夜がアインのPhantomとしての最後の夜だったその関係が一気に清算する様に次回から物語が動き出します。
今回はその準備と言ってもいい話であり、私の好きな言い回しですが『終わりの始まり』としての回でしたね。
また水面下でアインが人知れず悶々と思い苦しんでいるのが細かな所作で示されている。
次回は原作ゲームで省かれていたコカイン襲撃、そしてアインが……皆まで言うと興ざめなので言いませんが、とにかく次回も楽しみですね。

2009年5月10日

●Phantom - Requiem for the Phantom - 第6話 「大火」 レビュー

大火は使い方を誤ると、自らも焦がすことになる

オリジナル回の2回目であり、待望の虚淵玄さんが担当される回です。
自分は前回も含めて勘違いをしていました。
オリジナル回2話は2クール26話放送するに当たり、エピソードが足りない分を埋めるためのものと思っていました。
それは思い違いでした、この2話は原作ゲームで描かれなかった部分を補強するものだったんです。
シリーズ構成を担当されている黒田さんの妙技ですね。

ツヴァイがトニー・ストーンの家族を殺した後日、雨が降っていました。
殺し屋家業を生業(なりわい)とする様になってもトラウマになりそうな母子殺しのミッションを終わらせたツヴァイは、生きるために食事をしていました。
食べているものはテイクアウトの焼きそば(と思われます)
箸の使い方は、覚えてるんだよな「この手で人を殺し、この手でものを食べる。どっちも同じ事。そうやって僕は生きている」
窓からゴミをあさる貧相な野良犬を見ながらツヴァイは独り言ちます。
「そういうこと、なんだよ」
人を殺すこと。ものを食べること。生きていく上で何ら変わらない等価な価値に感じるツヴァイ。
かつてアインが言った言葉が思い出されます。
『そのうちあなたも何も感じなくなる。この生き方に耐える方法は他にないから。いずれ、あなたもそうなるわ。実際に人を殺すようになればわかる』
まさにツヴァイはそうなっていました。
塩焼きそば卵入り?ちょっとここで個人的に反応してしまった箇所があります。
まずはツヴァイの食事。
おそらくは中華のテイクアウトと思います。
それで私が思い出したのは古くて恐縮ですがクリント・イーストウッドの代表的アクション映画「ダーティハリー2」でこの食事が出てるんですね(正確にはガサ入れ前のマフィアの事務所で中の連中が食べていたんです)
虚淵玄さんってアクション映画に造詣が深いから、オマージュとまでは申しませんが、その辺の雰囲気はあるのかもしれませんね。
それと雨の中、傘もささずレインジャケット姿の買い物帰りのアイン。
レインジャケットでかえってミニスカートが際立つアインレインジャケットはいいわ。雨に濡れないし、両手は空くし、銃も隠せるし...
何となく可愛いな、って思ったのですがこれもスタッフの皆さまの考えるイメージの延長線上のことではないかな?って思えたんです。
もし、アインが傘を差していると、何となく普通の人に見えるし、女の子が傘をさした買い物帰りの姿って、ちょっとルンルン気分の雰囲気も出てくる場合があるんですよね(苦笑)
アインは傘をささない。
普通の人の中で身を隠す様に生きている殺し屋。
そんなイメージをスタッフの皆さまは大事にされたのかな?って思いました。

アインは何となく捨てられていた花束から花を一輪だけ持ってきてコップに生けていました。
花を......見てみたかったの

この花はまだ生きているわ

たぶん彼女自身は理由も分からないでしょう。
ツヴァイにその理由を聞かれれば、
『理由はないわ。ただ置きたかっただけ』
とでも言うところでしょう。
この二人も、マフィアの家族でなければ......葬儀の日の、涙雨
実は万年ヒラだったガント警官そして同じ頃、トニー・ストーンは怒りの眼差しのまま殺された妻エバと一人息子デュークの葬儀に出ていました。
部下を引き連れ、墓地から出てきたところを馴染みの警官ガントが待ち構えていました。
ガントは警告としてトニーに向かって言います。
「今のお前は血の雨を降らそうって時の目をしてやがるぜ。いいな、バカはするなよ。何時だって見張ってるからな」

アントン、トニーの腹心の部下であったが......「やるのかトニー」
トニー・ストーンの腹心中の腹心、アントンは不安げに言います。
インフェルノとの会合の場で手勢を瞬く間に殺された事を考えればアントンが不安になるのも無理はありません。
しかし、トニーはやる気でした。
「ああ、インフェルノはたたきつぶす。仇討ちじゃねぇ俺たちの街を守るためだ」
ガントが監視している中、派手な動きは取れません。
そこでトニーが考えたのが、
「俺たちが一切手を汚さずに奴らに引導を渡してやる方法だ」
トニーが目を付けたのはインフェルノのネットワークそのもの。
おおぉ、正確すぎる調査結果(笑)マフィアの中でもインフェルノに加わることでメリットを得る人物をピックアップしていました。
その調査結果はかなり的を得たものでしたが如何せん証拠がない。
そこで、
「その証拠を掴んで暴露してやれば奴らは終わりだ」
その証拠を所属しているマフィアに暴露。身内の不始末は内々で片を付ける(つまり始末される)
「仁義を踏みにじった連中は、自業自得でくたばるのさ」
トニー・ストーンにとってインフェルノは相手が悪すぎたインフェルノの秘匿性の裏をかいた石頭トニー・ストーンらしからぬ搦め手でした。
トニーはアントンにインフェルノ関係者の調査を命じます。
「連中に張り付いて化けの皮を剥いでやれ。ただし、慎重にな」
しかし、トニーは気づいていませんでした。
この世界は力ある者が勝ち、人は利益によって動くものである。
信条だけで行動する自分は時代遅れの人間であるということを。

この二人のパワーバランスも崩れようとしているクロウディアは最高幹部会に呼ばれていました。
そこに呼んでいないサイス=マスターがいました。
「なぜここにいる?」
呼んだのは最高幹部であるレイモンド・マグワイヤ。サイス=マスターの(偏執的)独創性のある提言を求めてのこと。
以後、幹部会にはレギュラーで呼ばれることになると。
一応クロウディアの配下とは言え、クロウディアと事実上肩を並べることになります。
この人って「ベルサイユの薔薇」に出れそうですね(笑)組織内で追い詰められていくクロウディア。彼女の次の行動は......
「異論はあるかね?」
「いいえ」
クロウディアは最高幹部マグワイヤの意志を否定することは出来ませんでした。

インフェルノってホントに秘匿性ってあるんですかね?(笑)インフェルノ最高幹部会の議題はトニー・ストーンの新たな動きについて。
トニー・ストーンが始めたインフェルノメンバーに対する身辺調査のことでした。
石頭トニー・ストーンが搦め手で来るのはインフェルノとしても意外でした。
対策はただ一つ、ストーンファミリーと事を構えて叩きつぶすこと。
しかし、その作を取ったとき、無傷で手に入れたかったメラニースクウェアが火の海になるのは必定でした。
そこで異議を唱える者がいました。
サイス=マスターです。彼は、
「私にはトニー・ストーンの迂闊な行動が、千載一遇のチャンスに思えてなりません」
サイス=マスター、彼は一級の商売人ですもう少しインフェルノ最高幹部の畏怖を見せて欲しいマグワイヤ
サイス=マスターの提示した作戦は、大胆で効果的なものでした。
作戦の実現を疑問視する声もありましたが、最終的にはマグワイヤが作戦実行を決断します。
「つくづく己の才覚を売り込むタイミングを男だな」
「恐れ入ります」

自ら発案した作戦の実行を認められたサイス=マスターは得意の絶頂でした。
その勢いでサイス=マスターは私邸にてアインを写真に納めていました。
普通の撮影ではない。
物言わぬ灰色のマネキン達と競演の撮影会。
「いいぞアイン、素晴らしい。全くお前は最高の素材だ」
シャッターの音とフラッシュの光がその場を形作る異界の気配さえありました。
サイス=マスターは得意げに一人語り続けます。
あぁ、今日も変態おっさんのおもちゃにされてる(アイン談(笑))あ~、うっとうしい
やっぱ、このおっさん、変態でなきゃ盛り上がりませんね(笑)アイン、マジで嫌がってますよね(苦笑)
あの~、天井桟敷って劇場で一番料金が安い席だったのでは?心の叫びは届かない無機質なプリマドンナ
「この無意味な混沌に満ちた世界。私の意志が塗り替えていくのだ。新たな秩序。新たな均衡。全て私が組み立てる。この演目では神ですらある。天井桟敷の観客だ!」
無機質な人形に取り囲まれ、その人形達以上に無機質な表情のアイン。
「主役はお前だ、アイン。私の可愛いプリマドンナ」
今はただ、サイス=マスターにされるがままの人形でした。

「撮影会」が負担になっていたのか、ツヴァイが迎えの車を回していました。
「会議、長引いたのか?」
虚ろな目のアインは答えませんでした。
パートナーの調子は気になるよあ~、今日も目一杯あの変態親父におもちゃにされたわ、って言えないけど
っていつまでも尾を引いてちゃダメね。さ、お仕事お仕事(笑)そしておもむろに、
「次の作戦の指示書。後で目を通しておいて。今度は連続ミッションよ。ターゲットは12人」
一晩で12人を仕留める無謀とも言えるミッションでした。
しかし、アインは事も無げにいいます。
「それぞれの分担は難しくない。慎重にタイミングを計る。完璧な連携を心がける」
無謀とも言えるミッションに対して異議を差し挟まないアインにツヴァイは戸惑っていました。

嫌な思い出は洗い流して隠れ家の貸しロフトに戻ったツヴァイは作戦の指示書に目を通しました。
アインはシャワーを浴びていました。
このミッションが成功すればインフェルノメンバーの組織内のライバルは消え去り、メンバーは更に高い地位に上り詰める。
そして、アメリカ西海岸の裏社会のパワーバランスが大きく変わる。
「いいのか?ちょっと性急すぎるんじゃ」
「それはあなたが気にするべき事じゃない」
シャワーから上がったアインは全裸のまま頭を拭きつつツヴァイの前に出て会話を続けます。
訓練の時には下着姿のアインに年齢相応に恥ずかしがって目をそらしたツヴァイでしたが、人殺しを続けているうちに人らしい感じ方が無くなっていたようです。
それとクロウディアのおかげで女性の裸に怖じ気づくこともないようです。
「任務の意義ぐらい考えて当然だろ?」
「誰かにそういわれたの?」
また、あの女の入れ知恵?そんなんじゃ、無いけど......
アインの一言は鋭かった。
ツヴァイの考えはクロウディアの受け売りであり、アインも実際には分かっていたはずです。
でも、それはいらない考え。
「止めておきなさい。それは私たちの在り方にそぐわない」
「僕たちの在り方って、なんだよ?」
ベッドに横たわってアインは自分たちの生き方を改めてツヴァイに伝えます。
「道具であること。装置であること。私たちは機能しさえすればいい。余計なことを考えてはダメ」
ツヴァイは疑問を続けます。
「なぜそこまで言い切れるんだ。考えることが、僕らの害になるのか?」
アインは悲しい現実を語ります。
生き延びるために、ノイズをひろってはダメ壊れたら、死ぬわ
「壊れるわよ、私も、あなたも......」
考えれば考えるほど不条理の極みに陥り、まともな考えでは心も体もついて行けなくなる。
それは自分自身を蝕み壊してしまう。そして、アインも例外ではなく、自ら認めています。
ミッションとして子供にさえ手をかけてしまったツヴァイにアインの言葉に対して返す言葉は見つかりませんでした。
ここで面白いな、って感じた事があるんです。
それはキャラの扱い。
第4話でシャワー後のアインはバスタオルを体に巻いていました。
もっとも原作ファンは知っていますが、原作ゲームでのそのシーンでは今回6話同様、実は全裸だったんですね。
いやぁ、マジにすっぽんっぽんですなぁ(笑)もっとも、場面構成を変えて、一人浴室で誰にも言えない恐怖と苦痛に思い悩むシーンで全裸では微妙にシーンのニュアンスが変わってしまう(アップ中心のカメラアングルであればシーンとしては保てたかもしれませんが)
まぁ、本当のところは分かりませんが、私は生みの親と、そうでないシナリオライターとでキャラへの扱いの遠慮があるのかな?って思えたんですよね。
アインとツヴァイの生みの親たる虚淵玄さんは遠慮無くキャラ達を追い込んで本来の形で言うべきことを言わせることが出来る。
誤解無き様に言いますが、言うはずのない台詞を言わせるのではなく、このキャラなら、この状況なら、この姿で言うはずだ、という思い。
それを遠慮会釈も無しに出来る。それは生みの親こそ出来ることと思います。

全てはサイス=マスターの手の内にある港にてリズィと部下達がサイス=マスター立案の作戦準備を進めていました。
「準備万端整っているようですな」
「へらへらしてんじゃねぇぞ蛇男」
リズィはどうしてもサイス=マスターという人間好きになれない、というより嫌悪していました。
一晩で12人の警護の厳しいマフィアの幹部を皆殺しにする。
しかも、その後始末もセットで一晩で決着を付ける。
無謀と言うより曲芸に等しい作戦。
所属している組織の仕事はいえ、サイス=マスターの作戦と言うこともあり、リズィは良い気分ではありませんでした。
しかも、上司であり、警護対象であり、親友であるクロウディアは今作戦には参加していませんでした。
サイス=マスターは言うには、
「他の案件があるとかで立ち会えない、と。困ったものですな」
クロウディアに取って代わる気満々のサイス=マスターリズィは根っこのところでサイス=マスターと合わないようです
言葉にクロウディアに対して冷ややかな嫌みが混じっていることを感じたリズィはサイス=マスターに噛み付きます。
「クロウディアの采配なら私はどんな危ない橋でも渡ってやる。だが、てめぇの指図に命を張るスジはねぇ」
しかし、サイス=マスターは至って冷静でした。
「こういった形の作戦はますます増えていく。君も身の振り方を考え直す必要に迫られるかもしれんよ。ミズ・ガーランド」
リズィはインフェルノの中でも昔気質な性格で実働部隊を指揮できる立場でありながら親友クロウディアのボディガードを喜んで受けている。
そのクロウディアの側で感じていること。
この目の前の蛇男は今やインフェルノの中でも危険なミッションをPhantomを使ってこなし、その地位を強固なものにしてきている。
その勢いは上司であるクロウディアを追い抜かんとするほどのもの。
それは権力争いに無関心なクロウディアでも感じていたことです。
将来設計は計画的にそりゃどーも(笑)
しかし、リズィとサイス=マスターのきわどい会話はここで終了。作戦開始時間が迫ってきたのです。
「リズィ、時間だ」
「ぼさっとするな、出るぞ」
リズィの率いる部隊はサイス=マスターを残してその場を離れました。

限りないものが二つ。女性の美しさと、それを悪用すること同じ頃、アインとツヴァイも準備が終わっていました。
パーティー会場に潜り込むために、二人は正装していました。
アインはパーティーに相応しくドレスを身につけ、ヘアメイクも施して普段のアインから想像も出来ない美しい素敵な淑女でした。
「行きましょう」
「ああ」
場所は変わってインフェルノメンバー、リチャード・ハリントンが参加しているパーティー会場に移ります。
そこにもトニー・ストーンが放った部下がいました。
リチャード・ハリントンは部下から耳打ちされてパーティー会場から離れます。
怪しい動きにトニー・ストーンの部下が尾行します。
しかし、彼を待受けていたのは「死」でした。
駐車場に出てきたところをサイレンサーを付けた銃でアインが密かに射殺しました。ドレスを身にまとったままで。
このとき既にアインの瞳の色が違うトニーの手下を殺した銃を渡します
作戦は順調に進行中連絡はイヤホンマイクにて
アインはサイレンサーを外してリチャード・ハリントンに周りに疑われない自然な動きで銃を渡します。
「フェーズ1完了」
「了解。フェーズ2開始」
アインの手短な状況報告を得て、ツヴァイは次の行動に移ります。
銃を持ち、マスケラを被って。
ダッシュでターゲットへの距離を一気に縮め、射殺して走り去ります。
今度は僕の番だ意外に警備が手薄
そして、リチャード・ハリントンは「打ち合わせ」通りに駐車場でトニー・ストーンの部下を暗殺犯として仕留めたふりをします。
ツヴァイが使った銃とマスケラを側に置いて。
これがその夜のアインとツヴァイが放った「大火」の始まりでした。

あらゆる暗殺術を体得したツヴァイ先の作戦の後、移動したツヴァイは次のターゲット(トニー・ストーンの部下)を仕留めていました。
銃を使わずにワイヤーを使った絞殺でした。
ツヴァイは殺した男の車をそのまま奪い、走り去っていきました。
場所はハイウェイに移り、次のターゲットであるマフィアの幹部の乗った車に対し、リズィとその配下運転する車がさりげない動きで包囲の形を取っていました。
その包囲の最終段階で後続の車が距離を置き始めたとき、さすがにマフィアの幹部も異常な状況に気がつきます。
その直後に前方でトレーラーを運転していたリズィがマフィア幹部の車の進路をふさぎます。
その状況ではマフィア幹部を乗せた車は止まる術しかありませんでした。
「何事だ」
っと幹部が言ったとき、アインの乗るバイクがかなりのハイスピードでその場に突入してきます。
手にするのはM4A1(と思われます)
ここのくだりのアインはかっこいいかなり無謀な射撃体勢
瞳の色が違うM4A1でターゲットを蜂の巣にするアイン
アインはM4A1を構え、照準を車に合わせます。
ここで意外なことが分かります。
それはアインの瞳です。
アインの瞳はいつもの色ではありませんでした。
ツヴァイと少し色が違うものの、それはまさしく「暗殺者」の色でした。
アインもツヴァイ同様、心と体を「暗殺者」にシフトしなければ人は殺せなかった。
『道具であること。装置であること。私たちは機能しさえすればいい』
暗殺者の瞳であるときのツヴァイは何も感じないそうしなければ生きていけない。そう自分に言い聞かせなければ人は殺せなかったのです。
アインはフルオートでマフィア幹部の乗る車を蜂の巣にします。
アインが走り去った後、今度は車を奪ったツヴァイがそのまま運転する車を蜂の巣にされたマフィア幹部に追突させます。
証拠隠滅の仕上げとして漏れ出てきたガソリンに火を放ちます。
ツヴァイは迎えの車に乗ってその場を去りました。
引火した火が車に燃え移り爆発する襲撃現場。
これで細かい証拠は出てこない。

火遊びの時間は終わらない1次と2次の襲撃はニュースとして報道されました。
それをショーの様に見ている人物がいました。
クロウディアと、ゲストとして案内されていた日本の広域暴力団・梧桐組の若頭 梧桐 大輔と、その舎弟の志賀 透でした。
「大げさね。夜はまだ始まったばかりだというのに」
「まだまだ続くってのか?あんな騒ぎが」
クロウディアは微笑みで返事をしていました。
アインは休む間もなくミッションを次の段階に進めていました。
今度は狙撃ミッション。
アインは難なく1発でターゲットを仕留めます。
アインは着実にターゲットを仕留め、後は哀れな死体を置いていくだけ
その後、ツヴァイが暗殺犯として仕立て上げるための「犯人の死体」を狙撃ポイントに放置します。
クロウディアの言葉が重なります。
「今夜の流血はほんの幕開けでしかないわ。この先に待っているのは本当の弱肉強食の時代。力さえあれば、どんな夢だって見られる世界。そんな生き方にミスター・ゴドー、あなたは魅力を感じるかしら?」
実のところ、この女は怖い思ったより声が高かった大輔さん
クロウディアの危険なささやきに梧桐組の若頭 梧桐 大輔は不敵な笑みを浮かべていました。
流血の夜は続いていました。
ツヴァイが単独でターゲットを仕留めている時、リズィとその部下達は別の場所で殴り込みをかけていました。
リズィも戦闘能力はずば抜けていますアインの目で見て、アインとして考えて、アインとして殺す
あるターゲットは車爆弾で派手に吹き飛び、ある者はアインの狙撃の餌食でした。
ツヴァイも着替える暇もなく銃一つでターゲットを仕留めていました。
またアインも愛用のコルト・パイソンに持ち替えてターゲットを冷静に仕留めていました。
あの「暗殺者」の目で。

石頭過ぎたトニートニー・ストーンは戦慄していました。
内偵として放っていた部下達とことごとく連絡が取れない。
じわじわと首を締め上げられる感覚に陥っていました。
「アントン、何がどうなっている!?アベルもバークも誰も連絡をよこさねぇ!こんな大事になっているというのに......」
マフィア幹部の連続襲撃事件はトニー・ストーンも知るところとなっていました。
『次は自分か?』
そんな思いもあったのでしょう。
そしてそれは、正解でした。
トニー、もう終わりなんだよ焦るトニーに比べて、アントンは至って冷静でした。
「誰も生きちゃいないさ。鉄砲玉として名を残したんだ。みんな本望だろうよ」
「う、なんだそりゃ?バーク達がやったってのか!?ドン=ゴニーやウーゴの野郎を!」
「誰もがそう思い込むだろう。墓の中までインタビューに行くヤツなんて、いやしないからな」
そして、トニー・ストーンの腹心中の腹心であったアントンがボスであるトニーに銃を向け、躊躇することなく引き金を引きます。
1発目は肩に当たります。
「アントン、なぜ?」
「ブルータス、お前もか」の心境のトニー別れの一発
偽りの「マフィア戦争」の受益者二人「分からないか?分からないだろうなぁ。石頭のアンタには......」
最後の銃声。
トニー・ストーンはとどめを刺され、事切れました。
そこに意外な人物が現れます。
現職警官のガント。
最後の筋書きは気を許すアントンにトニー・ストーン殺害を任せ、実際に射殺したのは警官であるガントの手柄とする。
ガントはマフィア戦争を終結に導いた功労として15年ぶりに昇進を果たし、アントンはインフェルノから応分の金をもらい、実のところ毛嫌いしていたメラニースクウェアから出て行くことになりました。

全てはサイス=マスターの筋書き通り。
「昨日、一つの時代が終わりました。長らく西海岸の暗黒街を支配してきた6人の老人達は悲運の最期を遂げ、トニーストーンは全ての黒幕と見なされて法の下に裁かれたのです。頭目を失ったそれぞれの組織は、我らの同胞達の手により、新たな時代へと導かれていくことでしょう。インフェルノの名の下に」
至って上機嫌のマグワイヤこの状況がクロウディアを次の行動に駆り立てる
インフェルノの事実上のNo.1とNo.2であるマグワイヤとワイズメルは上機嫌でした。
しかし、クロウディアは心中穏やかではありませんでした。

欲望と裏切りの結果全てが終わった翌日、警官ガントがマフィア戦争を終わらせた功労により表彰されるニュースが流れ、それをツヴァイは見ていました。
「みんな、このニュースを真に受けて、納得するんだろうか......」
普段なら無視する様なツヴァイのつぶやきに、アインは付き合って答えます。
「真実なんて誰も気にしないし、興味も持たないわ」
「あの日死んだ人たちのために誰が祈るんだろう。誰がその罪を償うんだろう......」
偽りと現実の狭間に戸惑うツヴァイ達観しているアイン。しかし、彼女の心もまた揺れ動いている
「祈りも贖罪もありはしないわ。死は全ての終わり。その後に何を付け足そうと、意味はない」
生きている間こそ全てであり、それは他人の屍を踏み越えて行かなければならない。
二人は意志も、想いも、意義も踏みにじられた世界に生きているのです。
アインが飾った花は枯れ果てていました。
『死は全ての終わり』
アインの言葉を示している様でした。

死んで花実は咲きません

いやぁ~、凄い回だった。
ターゲットをまとめて皆殺し、ってパターンは映画『ゴッドファーザー』でおなじみの手法ですが、対立マフィアにその罪をなすりつけるとはかなりエグイ方法ですね。
それにアインのライダースーツやパーティードレスに一人盛り上がったのですが、それも舞台に彩りを添えるものであり、あまりクローズアップされることなく流される。
やっぱりPhantomって淡々と殺伐としたお話ですよね。
その瞳、以前から?、それとも最近?今回一番驚いたのは文中でも書きましたがアインの瞳。
彼女もまた「暗殺者」にシフトしなければ人を殺せず、また自己を維持することが出来なかった。
実は原作ゲームではこの辺の描写は一切無く、普段の所作で彼女の心情が垣間見える感じでした。
アニメ版のアインは想像以上に多感な人物のようですね。
そういえばPhantom公式ブログ4月15日分に掲載されていましたが、7月24日発売予定のDVD特典ピクチャードラマって「どれも砕けた話?たのしいPhantomといった内容です」とのこと。
キャラが変わっちゃいそうなお話っぽいですが、楽しみですね☆

2009年5月 4日

●Phantom アインの最新ファッション設定

Phantomの公式ブログにて次回で出るアインの最新キャラデが出てました(って言うよりファッション設定かな?)
躰のラインがきわどいアインのライダースーツ
アインのかっっこいいライダースーツ姿。
次回はこの格好でバイク・アクションを魅せ、更にM4A1をフルオートでぶっ放すという派手なアクションを魅せてくれますね。

麗しいアインのパーティードレス姿(これはいいものだ(笑))
これまた麗しいアインのパーティードレス姿。
可愛らしさと女らしさを併せ持つ素敵すぎるデザイン。
髪型もファッションに合わせてしっとりとしたヘアデザインになってますね。
紫のバラも効果的♪
ドレスも背中がかなりきわどいことになっています。
この艶姿でアインは銃を持ちます。
それもまたかっこいい。

Phantom次回が更に楽しみになりましたね☆

2009年5月 3日

●Phantom - Requiem for the Phantom - 第5話「刹那」レビュー

草食系男子が肉食系お姉さんに食べられちゃうの図(爆)

今回は2話続く原作を離れたアニメ版オリジナル回の初回です。
こういうある意味独立したエピソードで求められるのは切り離しても本筋に影響を与えないパーツ性と、それとは別にキャラクター造形を深める魅力的なエピソードが必要と思います。
その良い事例が機動戦士ガンダム(ファーストガンダムよ)の迷......名エピソード「ククルス・ドアンの島」と思う次第であります(オチはそこかい!(笑))

子煩悩な昔気質のマフィア、トニー・ストーン今度のターゲットはメラニー・スクウェアの牛耳る地元マフィア、ストーンファミリーのボス、トニー・ストーン。
ハードドラッグを認めない昔気質のトニー・ストーンに付いた通り名が「石頭トニー」(名前のまんまですな(笑))
彼には妻のヱヴァ......じゃなくてエバと一人息子のデューク(騎士刑事デュークにあらず(古い!))がいました。
後にツヴァイはこのトニーの家族を監視することになります。
そのトニーが目下頭を痛めていたのが日増しに圧力を強くしてきているインフェルノの存在。
今日もまたそのインフェルノ側交渉役が訪ねて来ました。
要求はストーンファミリーのシマであるメラニー・スクウェアの引き渡し。
無論、昔気質の「石頭」は首を縦には振りません。
しかし、ストーン自身も部下達もインフェルノとPhantomの恐ろしさを知りませんでした。

一方、当面暗殺指令のない模様のアインとツヴァイは馴染みの訓練施設となった廃工場でトレーニングを積んでいました。
もちろんアインが教官。ツヴァイが生徒として。
二人のやっていた訓練は、一つの銃を取り合うという......イス取りゲームのような訓練をしていました(ちょっと微妙です(笑))
「準備はいい?」
「いつでも」
二人はいったん距離を置き、ほぼ同時に銃の置かれたテーブルに二人は飛びつきます。
お手つき!(笑)やったわね(アインお怒りモード(笑))
最初に銃に触れたのはアインでしたが、百人一首全国大会ばりの素早さでツヴァイはアインの手をはじきます(なんて例え(笑))
上手い具合に銃を手にするツヴァイでしたが、手がダメなりゃ足でとばかりにアインは(何となく卑怯な感じもしますが)銃を向けるツヴァイの手を蹴り上げます。
アインの見事な蹴りっぷり(笑)イス取りゲームじゃなくて銃取りゲーム最終段階
空中に飛んだ銃を取り合う形でアインとツヴァイはテーブルの上で組み合います(が、我慢大会(笑))
ツヴァイがこの力比べのような状況に集中していることを見て取ったアインは冷静にツヴァイを足払いにかけ、体勢を崩させて銃を手にします。
倒れたツヴァイに銃を向け、
目の前の銃だけじゃない。周りを全てを見るのよ。今度も教官アインの勝ち
「一度武器を封じてもそこで終わりじゃない」
「ああぁ」
結局ツヴァイの完敗でしたが、ツヴァイの成長ぶりは目を見張るものがありました。

若い男を物色しに来たクロウディア姐さん(爆)「見事なものね」
二人の訓練を密かに見ていた人物がいました。
インフェルノ幹部、クロウディアです。
「最初はなすすべもなかったのに、もう渡り合えてるじゃない」
ツヴァイは謙遜します。
「コーチがいいからです」
クロウディアはツヴァイに用事が二つあり、その用向きについてはクロウディアの私邸にて伝えることでした。
呼ばれるツヴァイにアインはほぼ無視するように視線を投げることもしなかったので、ツヴァイはその場の最高権限を所有するクロウディアに付いていくしかありませんでした。このシーンは短いのですが、非常に女性的なものを感じました。
言わばツヴァイを真ん中にした三角関係ですね。
この「訓練場」はアインにしてみれば「聖域」と思うんですよね。
ここにはアインとツヴァイしかいない。
二人だけの世界(そこに明確な恋愛感情はない)
ツヴァイを連れて行かないでしかし、そこに異種な存在が入ってくることにアインは無言の拒否反応を示していたように思えます。
しかも、クロウディアはアインの半身とも言えるツヴァイを今日の任務だけでなく、その身をもアイン側から引き離して連れて行こうとしている。
でも、立場上アインに拒否権はない。
終始無言のアインは、言葉にならない拒否的な感情を持っていたように思えます。

さぁ~て、ごちそうのお時間よ(爆)さて、上司の権限で生きのいい若い男を私邸に連れ込んだクロウディアさん(爆)
しかもリズィを別件で外すという用意周到さ。
(別の意味で)ツヴァイがアブない!アインのジェラシーストームが発動する!!(って展開はPhantomにはありませんからね(笑))
もったいぶるクロウディアに改めて命令を聞くツヴァイでしたが、クロウディアの言う命令は意外なものでした。
「まず一つは今夜の私の護衛役兼話し相手になって欲しいの」
ダメだ。やっぱりクロウディアはツヴァイを食う気だ(爆)
「それから、任務の二つ目はある親子を監視すること」
「はい、命令であれば」
ツヴァイはインフェルノに飼われた猟犬として当然のごとく命令を受けようとします。
あなたは私のものしかし、クロウディアは意外なことを言います。
「ダメよ。あなたはお人形じゃないの。なぜ監視しなければならないのか、そこにどんな意義があるのか聞かないと、ね」
台詞の最初「あなたは『お人形』じゃない」は言い換えれば「あなたはアインと違う」と言っていることと同義語ですね。
サイス=マスターの言うことを忠実に守り、実行する。クロウディアはアインをサイス=マスターの言うなりの『お人形』と思っている。
確かにそれはその通りなのですが、クロウディアも、そばにいるツヴァイでさえ意識していなかったのです。
アインも血の通う人間であり、意識も心も確かに持っている存在であることを。

今ひとつインパクトに欠けるトニー親分同じ頃、ストーンファミリーは精神的恐慌に陥っていました。
「インフェルノの全容がわからねぇだと!?」
インフェルノはその名の通り秘匿性の強いマフィア・ネットワークです。
これ以上の調査は無用と判断したボスのトニー・ストーンはインフェルノと会合の機会を設ける算段をします。
一つだけ条件を付けて。
「お前らのボスを連れてこい」
と。
トニー・ストーンは交渉の結果、場合によっては返り討ちにするつもりです。
ストーンファミリーはインフェルノと全面戦争をする覚悟でした。
部下達はトニー自身の家族、エバとデュークの身を案じます。
トニーもそれは承知しており、警護の徹底を部下に指示します。

若い男なんて、ちょろいもんよ(笑)クロウディアの私邸では、二つ目の指示の詳細がツヴァイに伝えられていました。
「じゃ、相手の出方次第ではその親子を......」
「そう、それでも、殺れる?」
無力な母子を手にかけるかもしれない命令。
ツヴァイは思わず握った拳を硬くします。
身を寄せてきたクロウディアは会話の詰めに入ります。
「聞かせて、ただ命令されるのではなく、あなたの返事を」
ツヴァイは自分の立場を知っていました。
人を殺してきた。償いも出来ない。後戻りも出来ない。殺さなければ殺される。
ツヴァイは声無く首肯します。
ただ、彼はここでは先の結果を深く考えずに肯いたように思えます。
その時、二人の隠れ家である貸しロフトでは照明も付けずに月明かりの中でツヴァイの帰りを待つアインがいました。
酒を飲んで間を持たせる趣向のない彼女は飲み物(ミネラルウォーター?)を飲みながらツヴァイの帰りを待っていました。
たぶんアインは意識としては、
「ツヴァイが帰ってこない」
と言うだけのことだったと思います。
今の私に付き合ってくれるのは、この月明かりだけ自分自身待つ理由がわからないアイン
しかし、彼女自身気がついていないことがありました。
この2年あまりの間、アインは他人を必要としていなかった。
むしろ共闘など足手まといでもってのほかだった。
その彼女がツヴァイの帰りに意識を向けている。
アインの半身とも言える存在であるツヴァイは既に彼女の心の一部になっているのです。

トニー・ストーンとその息子デュークが遊園地で遊ぶ約束の日、アインとツヴァイもそこにいました。
いつぞやのショッピングモールの様にアインは彼氏とのデートではしゃぐ可愛い女の子を演じていました。
「毎度!」って言ってるみたい(笑)彼女に振り回される役が似合っているツヴァイ(笑)
ここでエバ、デューク母子の監視に合わせてアインは群衆の中で「羊の皮を被る」訓練をツヴァイに課していました。
「だいぶ慣れたようね」
「羊の群れに溶け込むには『羊の皮を被る』」
微笑みを絶やさず、口調も女の子然としていながらもアインは「教官」として課題を言います。
後にいるのが課題の男「5人前にすれ違った人の特徴は?」
「20代の白人男性。ドジャースの帽子に黒のシャツ。携帯で話していた雰囲気から友人とはぐれて落ち合う場所を探している途中」
「正解よ」
ここだけアインの声のトーンが落ちます。
アインはツヴァイが自分により近づく事については複雑な感情を未だに持ってしまうようです。
「羊の皮を被っても『オオカミの嗅覚は忘れない』」
「それは、君が教えてくれたことだ」
遊園地内のベンチで二人が休憩していると、その前をボディーガードを引き連れたトニー・ストーン親子が二人の目の前に来ます。
まさかトニー・ストーンは意識もしていないティーンエイジャーのカップルが目下敵対しているインフェルノ最高の殺し屋とは思わず、無防備な姿を見せていました。
ツヴァイは身を明かさない殺し屋としてはあるまじき事をしてしまいます。
殺し屋は視線を固定してはならないこれがこの親の子最後の遊園地になります。
ターゲットを見つめてしまったのです。
彼の心の中では、
『僕が殺してしまうのか、この親子を』
と考えていたのかもしれません。
無垢な心のデュークはそのツヴァイの視線に気がつきます。
しかし、今のツヴァイはある意味、素の感情で見ていたのでデュークはその視線に恐怖を感じませんでした(むしろ、ツヴァイの失態に冷ややかな視線を送るアインの方が怖い(苦笑))
女装が似合いそうなデューク(爆)「あの子、女装が似合いそうだ」 「何考えてるの!」
いや、やっぱり可愛い。マジ、女装させちゃダメよ(笑)
無邪気に笑い返すデューク。
ツヴァイは矢も盾もたまらない思いにかられます。
しかし、それは殺し屋の彼には必要のない感情。
殺さなければ殺される、そんなシンプルな地獄に彼はいるのですから。
そんな彼にアインは無心の視線を向けていました。
任務を与えられれば確実に実行するであろうアインも、今のツヴァイの反応に対して肯定と否定とがせめぎ合っているように感じました。

その夜、トニー・ストーンはインフェルノとの会合に向かいます。
インフェルノ側代表はクロウディア。実際には地区担当は別にいるのですが、インフェルノの秘匿性確保と、会合場所そのものが鉄火場になる可能性を考慮してのことでした。
「切り札が2枚あれば、大抵のゲームは勝てるものです」
......まともな交渉事と言うより、実のところ殺る気満々のクロウディアの姉御さんでした(笑)
やる気満々のクロウディアの姐さん「あ~、こんな仕事やりたくねぇ」って感じ
同じ頃、トニー・ストーンの私邸にはトニーファミリー総出と思えるくらいの数の警護がサブマシンガンを片手に屋敷周辺を固めていました。
その屋敷のすぐそばの街灯の下に、ツヴァイは待機していました。
複雑な感情を抱えながら。

悪いけど、本当の私は武闘派よメラニースクウェアの会合場所にトニー・ストーンとクロウディアが対峙していました。
クロウディアの傍らにはボディーガードとしてリズィがいました。
トニー・ストーンは改めて言います。
「メラニースクウェアから手を引け」
トニーは「借りは返す」と言いますがクロウディアも、
「その必要はありません。欲しいのは、メラニースクウェアだけです」
お互い言い分は平行線を辿ります。
トニーはメラニースクウェアに集う人々はファミリーであり、裏切れないと言います。
「あなたの本当のファミリーが危険にさらされているとしても、同じ事が言えますか?」
トニーはクロウディアの言葉を軽い恫喝と受け取ります。
「そうしたが最後、あんた達も全てを失う。それでもいいのか?」
クロウディアは一歩も引きません。
「もう一度お聞きします。メラニースクウェアをインフェルノに明け渡していただけます?」
これはクロウディアからの事実上の最後通牒です。
さて、お答えは?......やだ(爆)
その場が殺気立ってきます。
沈黙の後のトニーの答えは、
「NOだ」
部屋に一気になだれ込んでくるトニーファミリーの兵隊達。
追い詰められるクロウディアとリズィ。
しかし、次の瞬間、トニーファミリーの兵隊達が次々と狙撃されます。
射手はアインでした。
マジでヤバイ、クロウディアの姐さん次の瞬間にはアインに皆殺しにされるストーンファミリーの皆さま(爆)
アイン「まず一人目、一丁上がり!」って言いませんよね(笑)......長袖にしてくれば良かった(笑)
拳銃では狙えない距離からの狙撃でした。
トニーファミリーの兵隊達片付けた後、クロウディアは冷静に指示を出します。
「ツヴァイ、仕事よ」
その指示を受けたときのツヴァイは暗殺者の目となっていました。

やっぱり可愛いデュークたん(笑)トニーファミリー襲撃の一方は屋敷にも伝えられ、エバはデュークのそばに向かいます。
その時、デュークは夜も遅いため自分のベッドにいました。
「ん?」
窓が開き、気配を感じたデュークが見たものは月明かりを背に人型の影のように現れたツヴァイでした。
今の彼は人ではなかった。
まさに亡霊のように立つツヴァイ相手が死神とも知らずに微笑むデューク
幼いデュークはツヴァイの放つ殺気にも気づかずに、見知った人が訪ねてきたものとばかり思っていました。
母親のエバがデュークの部屋に入ると、
「あのね、遊園地にいたお兄ちゃんが......」
デュークの視線の先をエバが見たとき、ツヴァイはためらうことなくエバに向かって引き金を引きました。
本当に不憫なエバツヴァイの業は深い
その場に崩れるエバ。
デュークは何が起こったのかわかりませんでした。
更に銃をデュークに向けるツヴァイ。
しかし、彼は見てしまいます。
鏡に映る、幼い少年に向かって銃を向ける死人のような目をした自分を。
ほんの一瞬だけ彼は引き金にかけた指の力を抜きます。
でも、人間的な反応はそこまで。
これが、僕か......これが最後の人の心の欠片
僕はこの子の顔を忘れないだろう......僕は殺し屋だ。人の屍のを踏み越えて生き延びる。
ツヴァイは条件反射のごとく、事を済ませるのでした。
急いで私邸に戻ってきたトニー・ストーンはデュークの部屋で変わり果てた姿となったエバとデュークを見て、力なくその場に崩れるように膝をつきます。
メラニースクウェアを守るために張った意地の結果がこれでした。

さぁ~、若い子をいただきましょうかぁ!(爆)今日は別行動だったアインは先に隠れ家に戻っていました。
また照明も付けずに月明かりだけでツヴァイの帰りを待っていました。
しかし、ツヴァイが向かったのはクロウディアの私邸でした。
無力な母子を手にかけたショックなのか、ツヴァイは暗殺者の瞳のままもうろうとしていました。
クロウディアは自分の望む段階にツヴァイが来たことを実感していました。
そのツヴァイを優しく抱きしめ、
「素敵よ。あなたは素敵よ」
クロウディアの私邸の照明は消えます。
そして、帰らぬパートナーをアインはずっと待ち続けていました。

まだ、帰らないの......

期待と不安の1セットとなったアニメ版オリジナルストーリー!......ちょい微妙でした。
トニー・ストーンは映画「ゴッドファーザー」のドン・コルレオーネの様に麻薬に手を出さない昔気質で子煩悩なマフィアというのは良い設定でした。
しかし、話が短いからトニーもその配下もちょっと軽い存在でしたね。
1話だけの出演だから仕方がないか。
ショタの趣味はないが、この子はアリだな(爆)それとやはり子供に手を出したのは辛かったな。
まぁ、ツヴァイがそれだけ心に傷を作ればクロウディアにつけ込まれる心の隙も出来ると思いますが、後味の悪さは残りましたね(それが許されざるPhantomの世界とも言えますが)
それと気になったのが、アインが自覚しないままにツヴァイへの精神的依存度を高めているように思えます。
ホントは私も楽しんでるんだけどね他の方が聞いたら異論を言われるかもしれませんが、私は既にツヴァイはアインの心の一部になっていると思います。
アインがツヴァイの帰りをひたすら待ち続けるシーンがそれを示しています。
アインは身も心もサイス=マスターに支配されている。
サイス=マスターが自分の障害になることは目に見えていますから、クロウディアにとってはアインに拮抗する力を持ちうるツヴァイは手段を選ばず欲しい手駒。
その狭間でアインとツヴァイは自分の心を押し殺して生きていきます。
その二人の生きあがく姿こそがPhantomの世界なんですね。

おっと次回「大火」は原作ゲームにてシナリオを担当されたアインとツヴァイの生みの親である虚淵玄さんが書かれているんですよね。
めちゃくちゃ楽しみ!
で、予告はというと今回では出番の少なかったアインが八面六臂の大活躍(うわぁ、おっさんの言い回し(笑))
アインのドレス姿を見る日が来ようとは......前回出番が少なかった八つ当たりよ!(爆)
ドレスで麗しく着飾れば、躰のラインがはっきり出ちゃうライダースーツに身を包んでバイク走行中にM4A1をフルオートでぶっ放す。
欲求不満が攻撃力で爆発した感じです(笑)
ただ、予告編中のアインの台詞、
「道具であること。装置であること。私たちはただ、『機能』しさえすればいい」
悲しい台詞です。
でも、この台詞にちょっと違う印象を感じるんですよね。

装置に......なりきれない

あのキリングマシーンと言ってもいいアインがあえて「確認」の様にこの台詞を言うことは、実のところ逆の人間的感情が強く大きくなり始めていて、それを否定する形でこの台詞が言われているのではないかと。
そうでなければ彼女らは生きていけないのですからね。

2009年4月26日

●Phantom 第4話 「暗殺」 レビュー

私は自分を知ってしまうことが、怖い

今回はアインとツヴァイの「普段」の行動を描いたエピソード。
無論、二人が動くときは常に人の血と死がつきまといます。
しかし、その中で二人はお互いを違う方向から意識してしまいます(未だ恋愛感情にあらず)
今回は二人が行う暗殺ミッションと互いの存在が強く意識されてしまう事を丁寧に描いたエピソードですね。
そして、アインがかな~りファンサービスする回でもありました(笑)

アインはサービス精神旺盛です(笑)さて、前回までの荒涼とした土地から一転して場所は街中のショッピングモールに。
水着売り場で冴えない顔で待っているツヴァイを迎えたのはファンサービスとしか思えないアインの水着の試着姿。
「どう?」
アインの意外にグラマスなプロポーションと、その恥じらいの表情に別の意味で打ちのめされたツヴァイ、答えに窮して素のままで反応してしまいます。
「ああぁ、似合ってる……と、思う」
「むぅ、別のにする」
ツヴァイは「ヘタレな彼氏」という役は上手そうだ(笑)レアなアインの拗ねる表情(可愛い)
アインが恥じらい、あまつさえ可愛く拗ねてます!(いったい何事か!?もう駆け落ちしたか?それともデフコン1か!!←ンな分けないじゃん(笑))
……とにかく異常事態です(笑)

アインはまるでデートに浮かれる少女みたい「ほら早くする!時間には限りがあるんだからね」
「ああぁ、わかってる」
アインはツヴァイの腕を取ってまるで初デートに浮かれる女の子のようにツヴァイをリードします。
途中でクマのぬいぐるみを買い、別の階に移ってはツヴァイを連れ回していました。
端から見れば年頃のカップルの楽しいデートにしか見えません。
このヘンクチャなワンちゃんの置物も意識のトリガーに……「この犬の置物、可愛いなぁ」 「え゙、マジ?」
ツヴァイは途中で買い物客であろう女性と腕がぶつかってしまい、その女性が手にしていたアイスが落ちてしまいます。
「弁償します」
「……バカ」
とにかく今回はアインのいろんな表情が見れます♪二人にとっては珍しい普通の人との会話
ここでもアインは表情豊かに愚痴ります。
結局、その女性には手持ちのコーンタイプではなく本格的なデザートタイプのアイスをツヴァイはごちそうします。
ここでも二人は普通の人のように振る舞い、緊張感もなく、その女性に対して気配りをします。
しかし、ここでだんだん状況が見えてきます。
とっさの演技力が凄いアイン普通なら学校に通う年齢である二人が平日にショッピングモールを歩き回っている。
アイスをごちそうしている女性からそれを言われるとツヴァイは言葉に詰まりますが、アインは学校の創立記念日のパーティーをサボっていると即興の作り話を女性に言います。
その女性と別れた後、ツヴァイは、
「ごめん」
自分の演技力を無さを責めるようにアインに詫びます。
しかし、アインの行動は違っていました。
「口にアイス付いている。そそっかしいんだからウォレスは……」
アインの行動に素で驚くツヴァイ今の私は、私じゃないのよ
アインは恋人のようにかいがいしくツヴァイの口元を拭ってあげますが、それは完璧に今の自分に科せられた人物を演じきっている行動の結果。
これには実のところ仮初めの平安を味わって、いつにないアインの可愛らしさに戸惑っていたツヴァイを現実の底にたたき落とします。
ツヴァイも今は偽りの身分「ウォレス=楊」を演じていたんです(前回ツヴァイが殺したウォレス大尉の本名)
ただ、演技の中であってもアインの瞳は何か愁いを帯びたものがありました。

ぬいぐるみから取り出したのは何かな?帰り道、ツヴァイの運転する車の中でアインはいつもの無機質な雰囲気に戻ります。
「モールの構造は把握した?」
「頭にたたき込んだよ」
「メインストリートにある防犯カメラの数は?」
「68。死角はそれなりにあるけどミッションには向かない」
「迂闊に他人とかかわらないで」
「すまない」
「戻ってミッションの検討をしましょう。荷物もそろそろ届くだろうし」
「了解」
二人のデートはまさに暗殺ミッション(ダラス・マフィアの大ボス、ドン=ルシオ暗殺)の下調べだったんですね。
疑われずに現場を見て回るには年頃のカップルのデートでカモフラージュするのは理にかなった行動だった訳です。
演技が下手というのは、まだ自分があるって事よアインは一言印象的なことを言います。
「ツヴァイ……演技、下手ね」
このアインの言葉は彼女自身、ペアを率いる立場としての言葉と言うより、むしろ自分の心にある思いが言葉として出てしまったように思えます。
他人を演じきれる自分、演じ切るに至っていないツヴァイ。
しかし、彼はまだ全てを切り捨てて自分自身を傍観者として見つめることが出来る暗殺者ではない。
普通の人の感覚と、暗殺者のそれとを行き来している。
まだ、完全な暗殺者ではない。
振り返る過去もない自分。不完全でも過去の記憶を持ち、アイデンティティの欠片を持っているツヴァイ。
この先を生きていくためにはツヴァイも自分のようにならなければならない事実。
その反面ツヴァイに対して羨望の念もある。
アインは自分で自覚している以上に不安定な心理状態にあるようです。

アインが出かけている間、ツヴァイはホテルの部屋で電気も付けずに一人思いを巡らせていました。
自分が偽りの名「ウォレス=楊」として存在していること。
ウォレスを殺した後、アインと共に何人も殺した事(原作では4人)
今の僕は「ウォレス」偽りの存在だ今回のターゲット、ドン=ルシオ
今回の暗殺ミッションのターゲット、ドン=ルシオを狙うために行く予定であるショッピングモールを下見していたこと。
っとその時、荷物を受け取りに行っていたアインが部屋に戻ります。
「贈り物よ」
中身はアイン用にコルト・パイソン、ツヴァイ用にベレッタM92FSが入っていました。
アインにあってユーモアというものはないよく考えたらかなり重量のある「贈り物」です(笑)
「ターゲットが現場に到着するのは、明日の午後3時前後。それまでに私たちはそれぞれ最適の場所に配置につく」
ツヴァイは正しい答えを出すわ「君の思う最適の場所は?」
「あなたが決めて」
「また、テスト?」
「マスターに言われてるの」
二人は夜の街に出て暗殺ミッション最適配置を検討します。
「襲撃は護衛が少なく、人目に付かない場所がいい」
「それはどこ?」
「答えは一つだ」
二人は意識していませんが、お互い貴重なパートナーなんですよね楽しそうな食事でも、中身は血塗られた会話
歩き回り、夕食の後、二人は夜のプールに行きます。
ここでツヴァイは最終的な答えにたどり着きます。
「ターゲットと護衛が気を緩める瞬間……それは」
プロポーションもいいけど、水着も凄いアイン(笑)暗殺者ツヴァイの瞳
私はその瞳が怖い怖いくらいに正解よ
ツヴァイの瞳が暗殺者の色に変わります。
「!」
アインは動揺します。
「もういいわ。正解よ」
言わずともわかる。あなたの瞳が答えを示している。
私と同じ暗殺者の瞳のあなたなら、私と同じ答えを導き出しているはずだから。
そして、出来ることならその瞳のあなたを私は、見たくないから。
…………………………ハズレかな?(笑)不安だけが募っていくアイン
「そろそろ戻りましょう」
アインの暗殺ミッション構築セミナーは終了します。
彼女の戸惑う感情を内包しながら。

ターゲット確認翌日、ターゲットであるドン=ルシオはショッピングモールに現れます。
すでに二人はショッピングモールに入っており、個別行動を取っていました。
しかし、ファミリーの兵隊総動員の警護体制ではドン=ルシオに迂闊に近寄れません。
偶然にもドン=ルシオ側が動き、アインにかなり近い距離に来ます。
でも、アインはそこで個人的な反応をしてしまいます。
ドン=ルシオが孫娘に買おうと手にしていた犬の置物(なのかな?)はツヴァイと仮初めのデートの中で一緒に見て話題にした置物でした。
そこでフラッシュバックするデート中のツヴァイ。
アインも実のところデートを楽しんでいたようです。
それはツヴァイが……思い出が一つ消える
過去の楽しい思い出と、今自分がやろうとしていること、そのあまりのギャップにアイン自身、戸惑いを押し殺すことは出来ないようでした。

ドン=ルシオの側近は見た目は愛らしいアインに気がかりな点を感じたのか尾行を始めます。
アインもそれに気づき、ツヴァイを応援に呼びます。
アインの外見に惑わされないトレーサー達ホントはアインはこの店で水着が買いたかったのでは?(笑)
『(携帯電話で)ターゲットを確認。でも、マークされた。こっちにトレーサーは二人。ごまかすから手伝って。エレベーター前の噴水。走って』
アインの待つ噴水前に駆け寄ったツヴァイを待っていたのはアインの軽い平手でした。
鉄拳制裁!(笑)痛いけど……気持ちいい(爆)
さぁ、たかりタイムよ(爆)「!」
「何分待ったと思ってるの?もぅ、一人で見て回っちゃったわよ」
「……ごめん」
まさに若いカップルの痴話げんか。
周りの人々の失笑の中、アインの怒りの声が響きます(笑)
最初は突然のことで戸惑っていたツヴァイもアインの意図を見抜き、デートに遅れてきたボーフレンドの役を演じます。
……アインって結構筋肉質なんだよな(爆)「言い訳なんか聞きたくないから。で、今日無駄にした1日、どうしてくれるの?」
「だから……」
「返事によっては帰るから」
「わかったよ。今日の買い物全部持つから」
「ディナーも?」
「いいよ」
そこで明るい表情になったアインはまるで本当の恋人同士のようにツヴァイに抱きつきます。
またツヴァイもアインを優しく抱きしめます。
生きるためには「仕事」をしなきゃいけないのそれが僕たちの道か
好きじゃないけどねここでアインを追跡していたトレーサー達も付き合いきれないとばかりに自分たちの守るべきドン=ルシオの元に戻ります。
二人は抱きしめ合ったまま、周りに聞こえない「恋人の距離」で作戦を確認します。
「ターゲットは南モールのアンティークショップ。迎えの車は南出口に回される」
「続行するのか?」
アインは返事をする代わりに、ツヴァイの胸に顔を埋めるだけでした。

二人は店員の隙を見計らって従業員用通路を使って裏手に出ます。
そこはドン=ルシオが出てくる南出口への最短の場所、そこで二人は襲撃の準備をします。
私たちは暗殺者「用意はいい?」
正体を隠すためにマスケラを被ります。
「ああ」
「アタックは私が、バックアップをお願い」
「了解」
ミッションの際の二人の会話は必要最低限に抑えられます。
余計なことを言う必要もないし、緊張をほぐすためのジョークもこの二人には必要ありません。
ここでツヴァイが導き出し、アインが正解とした襲撃のタイミングがツヴァイのモノローグで語られます。
『ターゲットと護衛が気を緩める瞬間』
それはドンが安全な防弾仕様の送迎車に乗り込み、役目を終えた護衛達が安堵に緊張をゆるめる瞬間こそが最良の襲撃チャンス。
その瞬間を見極め、アインとツヴァイは建物の陰から躍り出て、一気にドン=ルシオの元に突進します。
護衛達はツヴァイによってあっさりと射殺されます。
冷静にバックアップをつとめるツヴァイ必殺の防弾殺し
走り出したドンの乗る防弾車にアインは取りつき、防弾仕様のフロントガラスにKTW徹甲弾を6発立て続けに撃ち込みます。
さしもの防弾ガラスも1点集中の銃撃には耐えられず、防弾ガラスに穴が空き、最後の1発が運転手を撃ち抜きます。
運転手を失った防弾車は制御を失い停止。
中にいた護衛も車から出たところでバックアップのツヴァイに射殺されます。
冷静にコルト・パイソンの弾を装填したアインは躊躇することなくドン=ルシオを射殺しました。

アインにも隙が……しかし、アインもまた暗殺ミッション終了で迂闊にも気を緩めてしまい、周りの状況を一瞬見逃してしまいます。
アインに向けて放たれた銃撃から彼女を守るために、ツヴァイは身を挺して彼女をかばいます。
ツヴァイはそのために彼女の後に回ってアインをかばいますが、その瞬間までアインはツヴァイが後に来ていたことに気がつきませんでした。
「!」
後を取られた!ツヴァイの抱き留め方が心なしか優しい
あなたは……早すぎるわ短期間で自分の後を取るまでに急速に暗殺者として成長してしまったツヴァイ。
そのツヴァイの向こう側に自分の見たくないもの、知りたくないものがあることに気がついている。
アインはこの刹那の瞬間に不確かな不安を感じていました。
アインを銃撃から守ったツヴァイはそのままドン=ルシオの護衛達との銃撃戦に入ります。
アインは先ほどのショックから抜け出せないのか彼女らしくなく反撃もせずにツヴァイの瞳に見入っていました。
思わず感情的に目を細めてしまうアイン。
反撃出来ないでいるアイン私と同じ瞳
……いや『私もミッションの時にはあんな瞳をしているの……いや』
そうアインが思っているように感じました。
そこに思わぬ応援が入ります。
サイス=マスター本人が派手な真っ赤なBMWのコンバーティブルに乗って現れます。
「さぁ、幕引きだ」
ツヴァイは車に用意してあったウズィ=マシンガンを、アインは再装填したコルト・パイソンでドン=ルシオの護衛達に弾幕のような銃撃の挨拶をしてその場を去っていきました。

「ご苦労だったな。二人とも」
サイス=マスターの型通りのねぎらいの言葉がありましたが、アインとツヴァイ、二人の思いは別のところにありました。
ツヴァイを見つめるアイン。
アイン、僕に気があるのかな?(笑)ある訳無いでしょ(爆)
「何?」
「何でもないわ」
アインは先ほどのツヴァイに助けられた際に感じた事を引きずっているようでした。
でも、そう感じられたツヴァイもアインに対して感じていることがありました。
演技とはいえショッピングモールで見せたあのまぶしいほどの笑顔と怒り、そしてその仕草。年頃の女の子然としたアインの姿。
本当はあの姿こそがアインではないのか?普段の無口な姿こそが偽りの姿ではないのか?
そう思いを巡らせている内に今度はアインがツヴァイからの視線に気づき、
ツヴァイ、ホントは私に気があるのかしら?手を出したら殺されるに決まっている(爆)
僕もこんな表情が出来たらな(苦笑)「何?」
「いや、何でもない」
アインの視線から逃れるように落とした視線の先には先ほどの暗殺ミッションで使ったマスケラがありました。
『アイン、君の本当の顔はどれなんだ?』
ツヴァイの疑問にマスケラは答えてくれるはずもありませんでした。

アインとツヴァイはその夜に飛行機で戻ることとなりました。
なぜか手にしていたのよ空港ロビーで登場予定機を待っている間、なぜかアインは旅行パンフレットをいくつか持ってきていました。
「興味、あるの?」
「特にないわ」
アインも理解していませんでした。
その旅行パンフレットに自分の記憶の底にあるイメージが重ねられ、つい手に取ってしまっていたことを。
隣に座っていたアインはツヴァイの肩にもたれかかってきました。
こ、これは役得?(笑)人の縁は不思議なものです
戸惑うツヴァイに思わぬ人物が声をかけてきます。
ショッピングモールで会ったアイスを落としてしまった女性です。
「彼女、待ち疲れちゃったのかな?」
しばらく何気ない会話をした後、その女性は去っていきました。
女性が去った後、アインは目を開け、一言評価しました。
さりげなく嘘の演技が出来るようになったツヴァイいい演技が出来ると言うことは、
「今のは、いい演技だったわ」
今ミッションでの課題だったツヴァイの演技への簡易テストだったようですが、アインの表情を見ると、それだけではなかったように思えます。
アインのツヴァイに対するあらゆる感情はますます混迷の度を加えているように思えます。

ここで少しだけアインとツヴァイの今の暮らしが少しだけ紹介されますね。
二人が隠れ家としているのはロサンゼルスのコリアタウンの貸しロフト。
洗濯は近くのコインランドリー。
お気に入りの下着?アインはあの色が好みか(爆)
仕事道具の整備に余念のないアインこのシーンは何気ない生活感があってほほ笑ましかったのですが、次のシーンではやはりと言うべきかアインのコルト・パイソンのメンテナンスでした。
アインは丁寧に銃身を清掃している脇で、ツヴァイはテレビを見ている。
仕事の時以外はお互い年頃の男女でありながら何一切干渉しない暮らし。
『犬小屋で、ただ役目を待っている猟犬が二頭。それが今の僕たち』
それが二人の日常です。
しかし、お互い干渉しない暮らしをしていても、その存在は互いに影響し合っています。
ツヴァイから見れば全ての感情を押し殺し、冷徹に殺し屋としての役目を遂行しているアインもまたツヴァイから有形無形の影響を受けています。
窓のそばに立つツヴァイをシャワーから上がった(のかな?)アインが後から見つめていました。
なぜ、そんなサービスカットをするんだ(笑)もちろん、視聴率稼ぎよ(爆)
「どうした?」
「何でもないわ。気にしないで」
その役割上、お互いの胸中を語り合うという至極当たり前の思考がアインにはありません。

ここに来て初めてわかりやすい形でアインの胸中にある不安と恐怖が描かれます。
それはツヴァイを経て見る自分自身との対峙。
『マスターの言ったことは正しかった。彼は私が2年かけてたどった道を3ヶ月で駆け抜ける』
浴室は一人になれる空間私は私の手で、もう一人の私を育てている
アインは今までのツヴァイとの訓練を思い出していました。
『彼は、かつての、私……もう一人の、私』
アインはツヴァイを通して自分の記憶している2年間の記憶の再現を見ているような感覚を覚えていました。
記憶を失った悲しみ。そして生きていくことの苦痛。
それがやがて魂を蝕んでいく絶望もまた。
ツヴァイの苦痛を一番理解し、共感しているのもまたアインでした。
私は……あなたが怖い
『……怖い。真実。私のありのままの姿を見てしまいそうで……』
それは今の自分が壊れてしまうことと同義語です。
『あなたの瞳が……怖い』

端から見ればウィンドウショッピングを楽しむ普通の女の子今回は色々贅沢なくらいに盛り込まれて良い回でした。
アインのサービスショットもございましたし(笑)演技とはいえ表情豊かなアインも見れました♪
アインの声を担当している高垣彩陽さんも本領発揮というか、のびのびと演じられていましたね。
アクションシーンはドン=ルシオの護衛が少々ヘタレではありましたが(笑)アインの至近距離からの銃撃がかっこよかった。
アニメ版のアインって原作ゲームに比べて感受性が高くなっちゃってますね。
もう、ツヴァイの存在に影響受けすぎ。
暗殺ミッション遂行中って言うのに銃を持つのを忘れてツヴァイに見いちゃってます。
アインの世界アニメのアインは優しすぎる
これじゃPhantomの称号を早々ツヴァイに取られかねません(笑)
※ちなみに原作ゲームではしっかり戦っていました。
でも、一人では感じなかった事が鏡の中の自分のような存在であるツヴァイが現れたことでその精神の均衡がきわどい状態になってしまう。
全てを切り離せば生きていけるのよ……でもアインは何も感じない、何も考えないのではなく、その自分自身の絶望を深く静かに押しとどめることで今を生きてきた。
その生き方を再考させる存在がツヴァイなんですね。
ありのままの自分を見てしまう。その先に何があるのか、アインは見当も付きませんし理解できません。
わからないからこそ怖い。
おそらく自分が壊れてしまうことはうすうす予見していると思います。
アインの苦悩はまだまだ続きます。

最後に大きな意味を持つモンゴルの観光パンフレット

2009年4月18日

●Phantom 第3話 「実践」 レビュー

これであなたは何もかも変わってしまうわ……

さて、今回はいよいよツヴァイが普通の人間として越えてはならない一線を越えてしまうのエピソードですね。

原作の話も書きますのでこのレビューはネタバレ込みです。ご注意ください。

夢の続き……最初『実践』ってタイトルを見たとき、違和感を覚えたんですね。
ツヴァイが「現実に人を殺す」経験をする訳ですから本当の戦いである訳で、ここは『実戦』となるべきなのではないか?そう考えたのです。
そこで『実践』を辞書で引いてみると、
[実践:実際に行うこと。理論や理念を行動に移すこと。実行。]
なるほど、と思いましたね。
『実戦』であれば戦闘や戦争といった範疇に入ります。
しかし、殺すという行為は戦闘ではなく相手を不条理な状態(つまり『殺す』)にしてしまう行為であって、必ずしも「戦闘」と言った言葉に全て当てはまる訳ではないんですね。
『実践』とエピソード・タイトルはアインに受けた訓練・知識をまさに『実践』する回だった訳なんですね。

私って前振り長いっスねぇ~(笑)
さて、本編ですが、クロウディアの屋敷から物語はスタートします。
ここでははっきりと言いませんが、クロウディアがパスポートの写真に写るツヴァイを通して思い出している人物、ロメロとはクロウディアの実の弟のことです。
私って贖罪の余地はないわね。生き急いでしまったロメロ
『ロメロ。もし生まれ育った国が違ったら、あなたもこんな穏やかの顔でいられたのかしら』
裏社会を猛然と駆け抜けて短い命を終えたクロウディア唯一の家族だったロメロ。
クロウディアはついツヴァイをロメロと重ね合わせて見てしまう。
それがツヴァイに対して向けてしまう個人的な感情なのでしょう。
彼はもうこんな風には笑えないメキシコへの出張(?)前のリズィとのやりとりで、
「(パスポート写真ツヴァイ)この子に人が殺せると思う?」
「冗談だろ?虫も殺せそうにねぇよ」
「そうね、やっぱりそう思うわよね」
自分はそんな穏やかな面差しの少年を血塗られた道に押し出そうとしている。利用しようとしている。
クロウディアは自覚しています。自分はすでに地獄に堕ちていると。

外で訓練しているのは地面にたたきつけられることを前提にしているため一方、もっか「アインの正しい暗殺者養成講座」受講中のツヴァイはナイフ戦の模擬戦による訓練を受けていました。
剥き身のナイフによる模擬戦でしが、ツヴァイのナイフはアインに届かず、いいようにあしらわれます。
そして、そのアインの動きの中で初めて会ったときのナイフ戦ではアインが手加減していたことを理解します。
未だアインはツヴァイにとって越えられない大きな壁です。
しかし、偶然がツヴァイに味方します。
アインがツヴァイのシャツの襟首を掴んで投げようとしますが、訓練でぼろぼろになったシャツが千切れてしまい、その結果ツヴァイはアインの後を取る格好になります。
ツヴァイはアインを締めにかかりますが、途中でその行動を止めてしまいます。
ツヴァイはまだ隙だらけねアインの髪の香り……
ここでもはっきりと描かれていませんが、ツヴァイはアインのこの場に相応しくないアインの髪の香りと腕の細さに、今こうして組み絞めているのは年頃の少女であることに気づかされてしまうんですね。
でも、アインは暗殺者。今こうしていることもツヴァイを暗殺者として育てるための訓練。
アインはツヴァイの気持ちを意識することなくツヴァイの油断を見て取って反撃します。
「ナイフを持たせたまま絞めに持ち込んでどうするの」
『いえ、あなたの色香にほだされていました』
とはさすがに言えないツヴァイでありました(笑)

気がつけば、本作品において何となくアインが体を張ってお色気担当をしてますが(笑)今ひとつの感があります(爆)
さて、お出かけと言うことで身支度をしてますがツヴァイの前で思いっきり着替えてます。
下着を身につけずにいきなり服を着ています。
なぜか色気のないアインの着替えシーン手を出したら殺される。手を出したら殺される。手を出したら殺される。
ツヴァイは目線を向けますが、
「ん?」
「……いや」
全身これ凶器のアインには劣情を持っても如何ともしがたいものがあります(笑)
しかし、アイン(サイス=マスター)の調教のたまものか、ツヴァイはそういった感情はアインに持たず、ただ「人を殺しに行く」を言う大きな未知の感覚に戸惑っていたようでしたね。
でも、今日のアインは私服。外出の目的は殺しではなかったんですね。

この変質ぶりがサイス=マスターの醍醐味です(笑)そして、迎えの車に乗って着いた場所。それはサイス=マスターの私邸でした。
サイス=マスターはお気に入りの銃の手入れをしているところでした。
原作ではサイス=マスターは斬新なデザインや独創的なデザインの銃器がお気に入りで、それらを年代順に手入れをするのがサイス=マスターの楽しみだったんですね。
アニメ版ではそれらを省略して最後に手入れをする銃、AMTオートマグ180のみの描写となっています。
「アイン、来なさい」
ここではサイス=マスターは称号としてのファントムとは呼ばず「アイン」と呼んでいます。
これは彼女をサイス=マスターが個人的な所有物として扱うときのもの。
サイス=マスターは自ら作り上げた最強の凶器=アインの手入れをします。
香油をたっぷり手につけ、自ら全裸となったアインに塗り込んでいきます。
ここでサイス=マスターはアインの暗殺者としての完成度を確認します。
気にしちゃダメ。気にしちゃダメ。気にしちゃダメ。気にしちゃダメ。やっぱり深夜放送はいいですなぁ~♪
二つの芸術的な凶器の競演「誰も見抜けない。白く柔らかいこの肌に覆われたかくも危険な凶器」
鍛え抜かれた筋肉、しかしそれを覆い尽くす躰のラインによりアインは外見上可憐な少女に見えます。
アインと相対した者はその内に秘める凶器とも言える戦闘能力に気づくことなくアインの必殺の死を与えられてしまう。
繊細な美しさとどう猛な破壊力が共存するアイン。
「アイン、おまえは完璧だ。私が育て、私が作った。完璧な素材だ」
アインはサイス=マスターが自画自賛する自らの最高傑作なんですね。
「私はこの完璧さを永遠のものにしたい。ツヴァイを仕上げろ。おまえの手で。おまえのように完璧に」
「はい」
サイス=マスターはアインを完璧な暗殺者として作り上げましたが、アインの内なる心までは完全に把握していなかったことを知るのはまだ先のことです。

アインはツヴァイの訓練場である廃工場に戻って来るなり、
「来て、準備をしておかないと」
そして、ツヴァイが呼ばれた場所は武器置き場でした。

本当は暗殺者は銃器を選ぶべきではない

「今日までで一番扱い慣れたと思う銃を選んで」
「え、また訓練?」
「いいえ、今夜は"試験"よ」
まだ人を殺すことになるとは思っていないツヴァイ今夜、何もかも変わってしまうわ
試験という言葉を聞いてツヴァイは気合いを入れているようでしたが「人殺しの試験」と言うものがどういうものか、彼自身考えがその先まで及んでいないようですね。
暗殺者ツヴァイ誕生に手を貸すことになろうとは……しばらくして連れてこられた人物は現役ネイビーシールズ隊員ウォレス大尉。
長年インフェルノに武器の横流しをしてきたものの、欲を出してテロリストにも武器を横流ししてしまい、それが元でFBIにマークされるハメになります。
そこでインフェルノはリズィを使ってメキシコにて休暇中だったウォレス大尉を追跡していたFBI捜査官を殺害。その容疑によりウォレス大尉が逃亡せざるを得ない状況をセッティング。
インフェルノの懐に入ってきたところでツヴァイの「試験材料」とされてしまったのです。
サイス=マスターがジャッジをする形で「ウォレス大尉 vs ツヴァイ」をセッティング。先に10分間ウォレス大尉に猶予を与え、それをツヴァイが追う形になります。
ツヴァイがウォレス大尉を狩るのです。
早くちゃっちゃとやんなさいウォレス大尉が工場の奥に消えた後、サイス=マスターの冷たい声がツヴァイに放たれます。
「ツヴァイ、最初の任務を与える。あの男を殺せ」
「!?」
逡巡するツヴァイでしたがアインがツヴァイの銃を取り上げ、その銃口を向けます。
「もう一度選ばせてあげるわ。全てを受け入れて生き残るか。それとも拒んで死ぬか」
厳しい目で睨むアイン。未だに戸惑うツヴァイ。
人殺しは……行かなければあなたは生きられないのよ
仕方がないのよ……行かなければ僕は生きられないのか……
しかし、一瞬アインは目を細めます。
この瞬間彼女が、
『仕方ないのよ。私たちはこうすることでしか生きれない』
そう言ったように思えます。
アインの無言の説得でツヴァイはその銃を受け取り、ウォレス大尉を殺しに行きます。

仮の住まい兼訓練場として過ごしてきた廃工場が今やお互いの命を取り合う場所となっていました。
ウォレス大尉を追うツヴァイにこれまでアインからたたき込まれてきた「生き残る術(すべ)」が蘇ります。

追う者の心理。追われる者の心理。先に理解した者が勝つわ。

『追うときは逃げる気になって考える。逃げるときはその逆』
やがて地の利のあるツヴァイがウォレス大尉の背後を取りますが、一瞬のためらいの為に初弾を外してしまいます。
分がないと見るやウォレス大尉は銃を捨てて降参の意味で両手を挙げます。
僕に人が殺せるのか?一つの嘘をつく者は沢山の嘘をつく
「お前みたいな子供がどうしてこんな事をさせられてるのか知らんが、よく考えろ、俺とお前が殺し合う理由など無い」
所詮、殺し合いは騙しあいと同じよウォレス大尉はツヴァイの隙を作るために身の上話を始めます。
「お前家族はいるか?……」
しかし、ツヴァイの生存本能はこの男の言葉よりも腰に差したもう一丁の銃への危険性に向いていました。
またアインの言葉が、
『一つ嘘をつく者は沢山の嘘をつく』
『職人は複数の道具を持つ。殺しも同じ』
アインによって研ぎ澄まされた生存本能はウォレス大尉の嘘を看破し、ツヴァイに引き金を引かせます。
しかし、人殺しへのためらいなのかツヴァイはまた外してしまいます。

人は絶対的優位に立った瞬間、隙が出来る逃げるウォレス大尉。それを追うツヴァイ。
しかし、ツヴァイは焦りなのか逆にウォレス大尉の待ち伏せに遭い、銃まで落としてしまいます。
攻守逆転でウォレス大尉はその本能をむき出しにします。
「遊びは終わりだ。お前みたいなヤツを俺は大勢見てきた。引き金を引けない臆病者をな。今からお前にたたき込んでやる。人の殺しか立ってヤツを!」
武器を持たないツヴァイを蹴り倒し、壁に打ち付け、最後は足で横たわったツヴァイの胸を踏みつけます。
絶対的優位に立ったウォレス大尉は余裕でしたが、この男はツヴァイを追い詰めれば追い詰めるほどツヴァイが心とは別の生存本能=暗殺者の資質を見せることを知らなかったのです。
チェックメイト「人を殺すってのはな、誰にでも出来る仕事じゃねぇ。甘く見るなよ」
ツヴァイの苦痛から閉じた瞳が開いたとき、その瞳の色が人の心の通わぬ色になっていることにウォレス大尉は気がつきます。
しかし、全てが遅すぎ、ツヴァイは隠し持っていたナイフを刺し、とどめに更に隠し持っていた小型のリボルバーをウォレス大尉の眉間に突き付けます。
暗殺者としての生存本能をむき出しにしたツヴァイは躊躇することはありませんでした。


これであなたも私と同じ側に……そして、いつの間にかそばに来ていたアインの前でツヴァイはウォレス大尉を殺します。
意外なことにその瞬間をアインは見ていませんでした。
その場面に目を背けるのか、それとも何かを祈っていたのかわかりません。
感情がないように見えるアインもその画面フレーム同様、何も感じない訳ではなく、むしろ同じ年頃の少年をこちら側に引き込まざるを得なかった事に収まりの悪い感情を強く感じていたようです。
「ツヴァイ。初めてにしては悪くなかった」
人を殺したという事実にうちひしがれて、がっくりと膝をつくツヴァイにアインは言葉をかけます。
覚めない悪夢……「どうして、夢のハズだろ?こんなのは……」
「言ったでしょう。長い夢になるって。これは夢の続き。あなたが死ぬか、正気を失うまで……決して覚めない夢」
「終わらせたい?」
終わりたい。ツヴァイは切に望みます。
アインは自分の生き方をもう一度ツヴァイに伝えます。
「あなたの目も、あなたの耳も、あなたの心も捨てなさい。そして、ただの"ツヴァイ"になりなさい。何もかもツヴァイの目で見て、ツヴァイの耳で聞けばいい。そうすれば、もう何も怖くない。悲しくない。楽に、なれるわ」
「僕は、僕は、ツヴァイなんて名前じゃ、ない」
最後の葛藤。最後の抵抗。
区切りを、付けてあげるわアインはツヴァイに銃口を向け、
「そうだったわね。どうして欲しい?わたしに」
「終わらせてくれ。すべてを」
ツヴァイはアインに殺してくれることを懇願します。
悪夢を終わらせたい。この悪夢から逃げたい。
その一心でした。
アインは寂しい表情になり、手にしていたリボルバーの撃鉄を起こします。
荒野に響く銃声。
あなたを死なせないわ。あなたは、私だからしかし、アインの向けた銃口はツヴァイに向けられてはいませんでした。
全ての区切りをつける銃声。
「あなたはもう、あなたでなくなった」
気力を失ったツヴァイは横たわっていました。
「立ちなさい、ツヴァイ」
恐れ怯えていた少年の魂は死に、今あるのはツヴァイという名の抜け殻。
「試験は合格。これであなたはインフェルノの一員よ」
インフェルノに望まれた暗殺者、ツヴァイの誕生です。
あなたは私と共に生きるのよツヴァイとして

真下監督作品ヒロインとしては例外的に胸のあるアイン(笑)今回は久しぶりにストーリーを追いかけてレビューも併記するという以前からのレビュースタイルに戻っちゃいました(笑)
Phantomって元々原作がアドベンチャーゲームですからその命とも言うべきテキストの精度が高いんですよね。
それで今回は原作ゲーム(『Phantom INTEGRATION』バージョン)を平行してプレイしながらレビューを起こしていました。
アニメでは描ききれない原作ゲームで描かれる心の葛藤、またアニメならではの新たに解釈されて補足される動的な表現。
それらを併せて楽しむという、少々気力と体力はいりますが(笑)ちょっと違った視聴&プレイをしていました。
違うメディアで同じテーマを描く、これはこれで楽しかったですよ。

2009年4月12日

●Phantom 第2話 「訓練」 レビュー

暗殺者が作り上げられる話

さて、第2話ですが、過去編とも言うべきツヴァイの訓練が描かれます。
原作でも丁寧に描かれていて、
「地味なところだからアニメでは省略されるかな?」
って不安視されていたのですが、ここは「普通の人」が『暗殺者』に作り上げられる大切な描写。
真下監督はしっかり丁寧に描いてくれていますね。

ミニスカアクションじゃなくて良かった(笑)目を覚ましたツヴァイに自己紹介的に言うアインの短い台詞ですが、彼らの立ち位置が見えますね。
「名前はないわ。呼びにくければアインと呼んで」
名前もアイデンティティ(自己同一性)も奪われた存在である彼らの悲しい立場。
それも他人の屍を踏み越えなければならない現実をツヴァイは身をもって知ることになります。

ツヴァイが一生懸命に自分の過去を思い出そうとするとき、アインが苛立たしそうにツヴァイのバックを放り出し、
「無いのよ、もう。考えるだけ無駄」
っとアインは言いますが、彼女の横顔を見るとその言葉だけではないものを感じます。
怒りが入っているのかちょっと乱暴に荷物を扱うアインもう諦めなさい。あなたの生き方は決まってしまったのよ。
アインが自分の中では完全にかき消された過去を断片的ながらも持っている少年(ツヴァイ)に羨望の念が無かったと言ったら嘘になるでしょうね。
しかし、彼女は今はまだ暗殺者の仮面をかぶり続けます。

私はあなたを殺したい訳じゃないわ。前回も書きましたが、アニメ版アインは暗殺者の仮面をかぶり続けていますが、その実さざ波のように波立つ感情が目や手、その所作で表現されていますね。
ツヴァイが暗殺者の訓練を最初拒否しようとしたとき、アインは銃を向けます。
しかし、よく見るとその行為に一瞬逡巡するかのように空いている左手がぴくりと動くんですね。
これはアニメというキャパを持った映像表現のなせる技ですね(むろん映像が一番良いとは言いません。文章は心理描写において映像表現を超えます。それぞれ得手不得手はありますから)
アインは今の自分の立場を本当はよしとしていません。
人を殺し続ける自分を無心でいることを他人のように傍観することで自己を維持しているんです。
しかし、ツヴァイという存在が現れて彼女は今まで当たり前のように行っていた行動に少し障害を感じるようになります。
私たちの生き方は、これしかないのよ。「生きたければ生まれ変わるの。あなたはもう人を殺すことでしか存在を許されない」
アインの心がどこにあるのかはわかりませんが、少なくとも言えることは少年=ツヴァイを生かせるためには、彼を暗殺者に仕立てるしか道がないと言うこと。
彼女たちの生きる道はあまりにも悲しく、虚しく、険しい道ですね。
「夢だ……こんな、何もかも悪い夢なんだ」
ツヴァイは絶望の中でそうつぶやきます。
私も長い夢を見ているのよ。この台詞は案外重要です(原作的にも)
「それで慰めになるならかまわない。全部夢だと思っておくのね。でも、長い夢になるわよ」
アインの返す台詞は後々また現れます。
絶望の淵にいるツヴァイは気づきませんが、夢と思いたい悪夢のような状況に唯一共に進んでくれるアインの存在があることを。

訓練がスタートしますが、ここでほっとしたこと(なんかホッとすることが最近多いな(笑))は、訓練中、また作戦中、アインは戦闘服に着替えていること。
あのミニスカ、ノースリーブの私服で訓練をやっちゃったらなんか露骨に、
「これアニメですよ~(爆)」
って感じになっちゃったでしょうね(笑)
さて「アインの正しい暗殺者養成講座」(爆)が始まります。
これも結構原作準拠です。
基礎体力の強化(全ての基本)。平衡感覚を磨く(射撃感覚の強化)。格闘訓練。射撃の訓練。
受け身の取れない落下はイタイです。強くならないと、死ぬわよ。
全てフルオーダーで描写されます。
……地味だ(爆)
しかし、この描写無くてはいくら(暗殺者の)才能があるツヴァイでも人は殺せません。
格闘戦では全く歯が立ちません。自分の全てを強化し、感覚を研ぎ澄まし、自分と同じ息をする者を殺すに至るためには絶対必要な描写であり、省略は許されないシーンなんですね。
ちょっと悲しいのはツヴァイが訓練を受け入れ、従順にオーダーをこなしているのは体がぼろぼろになるまで訓練をしている間、余計なことを考えなくてすむから。
過去を失ったこと、名前も自分も失ったことも訓練の間は忘れていられるからなんですね。
しかし、それはサイス=マスターの狙いでもあったのですが……。

嬉しいシーンなんですけどね。考える余裕もないツヴァイさん。
射撃訓練ではなぜかアインの胸元が妙に強調されています。射撃スタンスを教えるために体も密着していて年頃の男の子であれば頭に血が上るシチュエーションなんですが訓練のしすぎで「思考回路はショート寸前♪」(←月に変わって(自主規制))状態のツヴァイはよくわかっておらんようです(MOTTAINAI!(笑))

クロウディアの胸中にあるものは?アインが「仕事」に行っている間、クロウディアがツヴァイに個人的に接触してきますね。
アインが妄信的にサイス=マスターに付き従っているのに対し、ツヴァイは精神的にそういう傾向がない。
一個人として話が出来る相手だからクロウディアは会ってみた。
ツヴァイの心の揺らぎを利用して自分の方に引き込む。
いずれ起こるであろうサイス=マスターとの対決に手駒は多いことに越したことはない。
そういう計算がクロウディア自身無いと言いきれないはずです。

また、一人殺した。二人が話している頃、アインは狙撃任務をこなしますが、ここの描写もいいんですよね。
狙撃時、体を「固定」した後、最後の障害は自分自身の呼吸です(他に風向き、風力、湿度等もありますが)
息を止め、あらゆる要素を計算し織り込み、引き金を絞り、自分と同じように息をしている「対象」の息の根を止める。
また、いつもの任務。

帰ってきたアインはこともなげに言いますね。
「そう、あなたと一緒。私も記憶を消されて暗殺者に……」
自分もツヴァイと同じ記憶を奪われ、暗殺者に仕立てられたことを話します。
しかし、
ただ、今を生き延びるだけ。「でも、それが何?今、この瞬間を生き残る。それだけ。殺し屋は、過ぎたことも先のことも、何もない」
アインも生き延びるために、殺し続けているんですね。
ツヴァイはクロウディアから貰った、
『僕らは奴隷じゃない。自由がある』
その言葉を唯一の救いのように言いますが、アインから一蹴されますね。
「そう信じたいならそうすればいいわ。でも、そのうちあなたも何も感じなくなる。この生き方に耐える方法は他にないから。いずれ、あなたもそうなるわ。実際に人を殺すようになればわかる」
人の命を奪いながら生きていく、アインが得た「生きた教訓」ですね。

ラスト、深夜に射撃訓練を自主的に再開したツヴァイをアインは見守ります。
その時、撃った際に飛び出した空薬莢が先に落ちたものに軽く当たりますが、それはまるで今の二人を象徴するように思えます。
人殺しを象徴する薬莢。それが寄り添うように地面に並んで落ちている。
二人は人を殺すことでしか存在し得ない。
しかし、一人ではない。二人であるという事実もこの象徴は意味していますね。

殺戮の世界に寄り添う二つの魂。

2009年4月11日

●Phantom 第1話 「覚醒」 レビュー

貴方は、私……

さてと、1週間遅れですが待望のアニメ版Phantom第1話のレビューを書きますね。
アニメ化ともなれば必ず起こるのが原作原理主義者(ヲィ)との葛藤です。
アニメ版と原作ゲーム、媒体も違えば表現も違う。
そこでいかに原作のエッセンスを大事にしながらアニメーションに昇華できるか、そこがアニメスタッフの腕の見せ所です。

このままメイド服でストーリーが進んだら別のお話になっちゃいます(笑)さて、本編ですが、想像していた以上に原作に敬意を表した作り方になっていますね。
第1話はすでに暗殺者となったツヴァイの行動と、未だ一介の民間人であった頃の彼が暗殺者としての才能の片鱗を見せる話が平行して語られます。
前のエントリー記事で心配していたアインのメイド姿は敵対するマフィアの大ボスの屋敷に潜り込むための扮装でありました。
コレはちょっとほっとしました(笑)

アニメ版の解釈としていいなぁ、と思ったのはアインの目の表情。
感情の起伏のない彼女でしたが、瞳の中に押し殺している感情の機微が現れているんですね。
冒頭でもツヴァイがガードマンを仕留める意志を固めたとき、アインは目をわずかに細めます。
僕は、生きるために殺す。何も感じない訳じゃないわ。
原作ゲームではなかなか表現しにくい彼女の意識の水面下の葛藤が見え隠れします。
実際、彼女の感情表現を見せるシーンやカットは意外なほど増やされていますね。
ツヴァイの「適性試験」後、催眠銃で眠らせたツヴァイに自分を重ね合わせて複雑な思いを巡らせるアインは気がつけばツヴァイのほほに触れます。
私は一人目の女私も貴方も生きている……
これもいい演出なんですよね。
なぜか?
彼女に触れるものは全て死にます。
私は、どこにもいない。どこにも行けない。しかし、彼女は初めて自分の分身、自分と同じ運命をたどる少年を目の前にして今までになかった感情の起伏を覚えるんです。
むろん、この段階では恋愛感情は生まれていません。
ただ、アインは触れることの出来る自分と同じ存在を感じます。
一人では感じなかった鏡に映る写し身のようなもう一人の自分。
彼女は内側に築いていた心の壁にわずかですがほころびが生じます。

ファントム・エフェクト発動!(笑)話は変わりますが、ツヴァイの姿が亡霊のように揺らぐシーンがあります。
この亡霊のように姿が揺らぐ効果は真下監督命名「ファントム・エフェクト」と言うものです。
シナリオ段階でしかかかわっていなかったシリーズ構成:黒田洋介さんと、原作者:虚淵玄さんは絵コンテの段階で真下監督の指示に見知らぬ単語、
「ファントム・エフェクト」
の記述を見つけてお二人とも、
「なんだコレは?」
とえらく困惑したそうです(笑)
※ネタもとはWEBラジオ「ファントムらじお」です。
ここにも、ゲーム、シナリオ、そして映像と違うメディアの解釈の違いとも言うべきものが見えて興味深かったですね。

作りは凄く丁寧で良いんですけどね……第1話を見終わって感じたことは、
「面白かったけど佳作すぎる」
と言う印象でした。
原作を大事にし、そのエッセンスを映像表現としてしっかり再構成している。
これは間違いない事実です。
しかし、1話としての掴みが弱すぎる印象なんです。
音楽の印象も少々弱い感じです。
梶浦由紀さんのオリジナルスコアのように音楽だけでも立ってしまうような世界観が欲しかった。

ただ、最後の最後で嬉しいサプライズがありましたね。
この後に出会う人々が一切の説明無しに描かれている。
ある人は敵となり、ある人は思わぬ関係となってしまう。
暴力団・梧桐組の若頭 梧桐 大輔と舎弟の志賀 透キャル、後のドライ
左がお節介好きの窪田 早苗。後のクラスメイトとなる藤枝 美緒。彼女自身にも秘密がある。
最後に登場した人々はアインとツヴァイ、この二人が出会ったことで自分たちの運命が大きく変わってしまったことを、知る由もありません。
運命の歯車は大きく回り出したのです。

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